中心市街地活性化推進体制、当面する課題

■推進体制の苦境

 中心市街地活性化。
推進のプロセスは次のように考えられます。

①発  意
②計画作成
③組織編成
④推  進

 新旧の基本計画を持っているところは、当然、④の段階にあることになりますが、残念ながら
①合意は形だけ
②計画は作ってみただけ
③組織は未成
ということで、推進段階とはいうもののその歩みはダッチロール、事業着手の有無に関わらず当該街区の都市機能は日々劣化、空洞化のスパイラルは着実に・止まることなく動いています。

 どうしてこういうことになったのか? 問題は、①発意の段階にありまして。

 本来ならば発意段階で行政・会議所・商業者(以下「三者」)の間で「中心市街地活性化の方向と方法」についてしっかり展望を確認し合意を確保したのち、商店街組織を巻き込んで計画作成段階に進むべきところ、“国の支援を受けるには基本計画を作らないと”といった薄っぺらな問題意識のもと、内容は二の次三の次、“ともかく作る”という限りでの三者(特に商店街の場合は既存組織の長限り)の合意を形成し、「先進事例」とやらの見よう見まねを軸に突貫工事で作りあげた、というのが大方の計画作成の事情ではなかったでしょうか。

 もちろん、それでも招聘されたプランナーさんがしかるべきスキルを持っていれば、発意段階~計画作成段階における最重要課題である「活性化の方向と方法」についての三者の合意形成について徹底した指導(理論講習を含む)を行い、「共通の土俵」を作るべきところ、スキルに劣るプランナーさんを迎えての取り組みは準備段階をスルーして「計画作成」の本番に突入します。
地元各方面の関係者も“それが普通”と思いこみました。

 ほんとうは前述のとおり、発意段階で三者からしかるべきメンバーが集合、「方向と方法」について」徹底した調査研究を行い、“わが中心市街地を活性化する方向と方法”について確たる成果を得てから「計画作成」段階に入っていく、というのが正しい段取りです。
さらに、計画作成段階では特に「商業の活性化」についてその主役を張らなければならない既存商業者の指導・教育を兼ねた調査研究を徹底することが不可欠ですが、なんの手だても講じられず、晴れて認定の日を迎えた、というのがこれまた大方の中心市街地の情況です。

 こんにち、劣化スパイラルのさなかにある中心市街地が直面している問題とそれに対応すべき商業者のスキル・意欲とのギャップには凄まじいものがありますが、その発生の根源は「発意」段階の至らなさにあるわけです。

 さらにこの「至らなさ」の原因を探っていくと、“商店街を活性化するには通行量を増やせばよい”という「一つ覚え」に逢着するのでありまして、確かに「通行量」でことが解決するのなら何も商業者に大嫌いな勉強をしてもらう必要はありません。
シャッターの外側の施策でシャッターを包囲すれば、その内側が活性化する、というのならば、です。

 このところ、“商店街活性化の根幹は、個店の繁盛だ”“繁盛する個店を作り出し、点から線、線から面へ波及させる”という方法への認識が徐々に拡がって来ているようですが、ここへ来て思わぬ「伏兵」が現れています。

 取り組みのスタート以来「通行量の増大」に取り組んできた一部の関係者が、「個店の繁盛実現」という新しい方向に対して、陰に陽に抵抗する。
本人さんたちにとってみれば、今まで“活性化への道”として基本計画にも掲げられていた方向と方法を遵守・推進してきたのに、今さら“これからは個店だ”という方針転換は、これまで自分たちが取り組んできたことを総否定するもの、「ハシゴをはずされた”と受け取る向きもあるかも知れません。情けないことですが。
いまさら活性化への道を勉強し直すのもおっくうだし。

 これには実際に事例が色々とありまして、新しい方向と方法に対する抵抗の箸にも棒にも掛からない実態は、対峙した人でないと分からないかも知れません(笑

 だがしかし。
抵抗が有ろうと無かろうと、活性化をホンキで実現しようとするなら、「方向と方法」の抜本的転換は必須課題、何としても実現しなければならないわけですが、問題は、この転換は「マイナス」からのスタートだということ。

 “問題は通行量で解決する”という取り組みの場合、個々の商業者はいわば「受益者」でありまして、まあ、“通行量を増やせば商売は繁盛する、増やしてやるからもちょっと辛抱してね”ということだったのかどうか、いずれにせよ、“商業者は自店の買い物行き先としての充実に取り組め”という方針は皆無、取り組むための支援施策も皆無という中で、「すべてを癒す」はずだった「通行量増加策」は不発、一部成功した都市でもその結果として個店の売り上げが増加した=経済活力が向上したというところは一個もありません。

 もちろん、この間、各個店の業績は劣化の一途、もはや商売の将来への希望は全くない、という情景が拡がっているわけですが、恐ろしいことに取り組み三者の間にも「相互不信」が芽生え・育ち、今や抜き差しならない情況にまで「発展」しているところもあるくらい。

 こういう情況からの再スタートですから、並大抵のことでは難しい。中には土俵に上がることさえ拒否する者もあると思われます。
ここからスタートして“ホンモノの中心市街地活性化への道”へと舵を切らなければならないわけですが、これまでの流れを教訓にするなら今度は“よし分かった、そっちの方向に進もう”という早とちりはしないことが肝要。それはまたしても失敗への道、ですからね。

 まずは、“中活法のスキームを活用するには、何が必要か”というイロハのイについて、自都市の来し方を振り返りつつ、考えてみること。
“今なら分かる”ということも色々あるかも知れません。

 特に、問題は最初に述べた“発意段階での合意形成”。
方向と方法についての合意を作る前に計画作成に突入してしまった(前述のとおり、「通行量」でこと解決するならそれでも良かったのですが)ことが問題でした。

 あらためてのスタートでは、あらかじめ「活性化の方向と方法」について三者の主要メンバーがしっかり合意しておくことが不可欠です。

 さしあたっての作業は、やがて編成される推進体制の中核となるべきメンバーの合意を形成する取り組み。
既にお分かりのことと思いますが、取り組むにあたっては優秀な支援者が必要です。
これまでのように、“中心市街地活性化? 住む人来る人を増やせばいいんですよね”といった「理論」しか持ち合わせていないプランナーさんなどを招聘すると、今度こそ取り返しがつきません。

 ということで、「方向と方法」を転換することが必要だと思い至ったあなたがまず為すべきことは“良き相談者”を確保すること。
確保する前提としてはもちろん“良き相談者”が具備すべき要件を確認しておくこと。

 苦境に陥っている(陥っていない、という認識もあるでしょうね)中心市街地、脱出の第一歩は推進体制の再構築です。
再構築の軸はもちろん、“ほんとうに活性化できる方向と方法”だということはいうまでもありません。


■ 計画にはシナリオが先行する

 タイトルのとおりでありまして、何ごとによらず何ごとかを為そうとして計画を立てるにあたっては、まず、ゴールまでの大まかなシナリオを描くのが当たり前です。
旅行の計画を立てるときでも、行き先・経路・日数・交通機関などを決める前にいきなりスケジュールを書く人はありますまい。

 中心市街地活性化の場合も同様でありまして、「法」のスキームと期間をもって何を実現するのか、事業主体の力量は如何、取り組みに動員可能な経営資源の質と量、環境与件の現状及び趨勢をどう見積もるか、等々の作業を行った上で、「活性化への道」のアウトライン、つまりシナリオを描かなければならない。

 次にこのシナリオをもとに、関係各方面の責任者が集合してその実現性について詳細に検討し、“よし、このシナリオで取り組もう”という合意が確立してはじめて「計画作成」に入ることになる。
一般に計画はこういう段階を経て作られますよね?

 計画作成段階。
実施すべき事業の内容と時期、事業間の連結のあり方などはすべてシナリオを基準に計画されます。関係各方面が取り組むそれぞれの専門分野の事業間の整合性を担保するのもシナリオです。

 計画に先立ってシナリオが作られていること。
この基本中の基本がまったく守られていないのが大方の都市の中心市街地活性化基本計画の水準ですね。
“住む人・来る人が増えれば街は活性化する”という一つ覚えにしたがって、住む人を増やすための事業、来る人を増やすための事業が“計画”され、「目標数値」まで設定されていますが、シナリオ抜きの数値目標の悲しさ、目標が達成されたら街がどうなるか、ということについては一切口を閉ざしています。
数値目標である「××%のアップ」が実現すれば、街の何がどう変わるのか?
説明している基本計画を見たことがありますか?

 計画に先立ってシナリオが描かれなかった、つまり、「活性化への道」についての合意を得ないまま、基本計画を作り、実践段階に突入してしまったのですから、言ってみれば目的地無し・羅針盤無しで遠洋航海に出るようなもの、誰もホンキで「どこか、夢と希望の持てるところに行ける」とは思っていないはず、ぶっちゃけ、迷走を続けているうちに精も根も尽き果てるにちがいない、とか思っていませんか?

 適切なシナリオを作れば、事業の主役として取り組みの最先頭に立たなければならないのは商業者です。都市機能としての物販機能の活性化、物販は各個店のシャッターの内側の機能ですから当たり前です。
商業者は基本計画の達成、さらに言えばそれを通じて歩んでいくシナリオに自分の事業の命運を賭けなければならない。
ところが。

 はじめに計画ありき、「人出増やし」の事業が羅列されているだけの計画を“自分の商売の起死回生の取り組み”と評価し、その達成に事業の命運を賭けるという人は一人もありません。
個別事業の成り行きについても殆ど無関心、ましてそれらの事業実施と平行して自店のシャッターの内側の改革改善にあたる、といったホンキで取り組むなら当然至極の姿勢も無し。
それで誰も不思議に思わないのは、「人出がすべてを癒す」という迷信があるから。

 “住む人来る人が増えれば問題は解決する”というのは“郵政を民営化すればすべてが解決する”によく似ていますね(笑
人出が増えても商売繁盛を実現できずにいる商店街は結構ありますからね。ということは、その間、確実に売場の劣化は進んでいることになる。
他方、取り組むべき事業に取り組んだら人出は増えていないが、繁盛店がボツボツ出始めた、という街もあります。

 「人出信仰」は百害あって一利無し、でありまして、認定基本計画も、そしてたぶん、これから新法に基づいて作られるであろう商店街活性化計画も、二十年、三十年前とまったく同様、「人出を増やす」事業の羅列でありまして、その結果は計画が作られる前からハッキリ見えています。

 という情況において、あらためて「活性化への道」を歩き始めることが求められていますが、既に申しあげているとおり、今回は“マイナスからの出立”ですから、そのつもりで覚悟を決めなければならない。
シナリオを欠いた結果として陥っている現状を踏まえて、「再出発のためのシナリオ」を描かなければならない。
まずは、あるべきだった取り組みを考えてみること。
そのためには「先進事例」の視察も有効です。ただし、当記事が示している方向での先進事例に限ります。

 この時期、タウンマネージャーさんが直面しているのは、あれこれの事業について補助金を得るための申請書つくりではありません。商業者を中核に位置づけた「活性化への道」を」構築し直す「シナリオ」を有志とともに描くこと、です。
事業の補助申請は乗りかかった舟、整斉と行いながら本命は新しい合意形成であることを理解しないと、補助事業は進んだが商店街は消滅した、ということになってしまいかねません。

 計画にはシナリオが先行する。
シナリオ抜きで計画を作るとどういう苦境に陥るか、あらためてキモに銘じてシナリオつくりからスタート、首尾良く取り組みが再構築できればその経験は「都市経営」の全領域に活用することが出来ます。

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  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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