『地域商店街活性化法』(2)

 ご承知のとおり、近く成立の運びとなっています。

地域商店街活性化法(案)

  全体を一読しました。
施行にあたっては「基本方針」が示されることになっていますので、方針を確認しないと断定は出来ませんが、ちょっと見、これは相当問題をはらむスキーム活用するにあたっては細心の注意が必要です。というか、従前からの取り組みを根本的に総括してからでないと活用は難しいと思います。

 詳しくは「商店街・起死回生」で取り組むとしてここではもっとも基本的な問題を指摘、皆さんの考察の材料に供することとして今日はごく簡単にサワリだけ。

その一 「商店街活性化事業」の定義について

法案は第二条(定義)2において、「商店街活性化事業」を次のように定義しています。
“商店街活性化事業とは”
①商店街振興組合等が
②当該振興組合等に係る商店街の区域及びその周辺の地域の住民の需要に応じて行う
③商品の販売または役務の提供、行事の実施等の事業であって
④これらの事業を行うことにより当該商店街への来訪者の増加を通じて
⑤主として当該商店街振興組合等の会員または所属員である中小小売業者又は中小サービス業者の事業機会の増大を図る
ものをいう”

つまり、
①事業の主体:商店街振興組合等商店街組織
②事業の目的:組合員の事業機会の増大のための来訪者の増大
③事業の内容:商圏内の住民の需要に対する商品の販売・サービスの提供、事業の実施等
 
 つまり、法律に定義される「商店街活性化事業」とは、
①商店街に立地する中小商業者の事業機会を増大するための
②商店街への来訪者の増加を目指す
ことを目的として
③商店街組織が商圏に居住する住民を対象に行う「物販、サービス、行事」
です。

 各種の商店街活性化事業を実施することで、商圏に居住する住民の商店街への来街機会を増やす、その結果来街者が増えれば組合員の事業機会の増大する、というのが法律の立脚点です。

 商店街では“来街者を増やすのは組合の仕事”といわれてきましたが、近年、体力の減衰、資金の枯渇、企画の陳腐化などの理由が相まって、「来街者増大」という組合の役割が上手く果たせなくなっていることは周知のところです。その結果商業者の「組織離れ」という傾向も出始めています。
 法律は、このような情況に鑑み、苦境に陥っている商店街組織を支援するために制定されたものですね。

 問題は、今後「商店街活性化事業」といえば“組合が取り組む来街者を増進するための事業”ということから、商店街活性化=来街者を増やすこと、というこれまでの通念がさらに強く関係各方面に共有される可能性があること。

いくら人を集めて「事業機会」を拡大しても、肝心の中小商業者が提供している「ショッピングの場(その劣化は商店街空洞化の大きな要因)」の改革を実現しない限り、増大した来街者が入店客増に直結することはありません。
このことは全国の商店街で数十年にわたってイヤというほど経験済みのことであり、にもかかわらず、未だに継続実施されているのが「組合の事業」です。

 最近、このような傾向に対する反省が徐々に増えてきているのですが、今回制定された商店街活性化を支援する法律において、商店街活性化事業とは商店街への来街者の増進に取り組むことを通じて個別商業者の事業機会を拡大することである、とあらためて確認することは、個店シャッターの内側の改革革新に取り組まなければならない、という差し迫っている課題への集中を中等半端なものにしてしまう可能性があるのではないでしょうか。

 もはや、店前通行量を増やせばその結果として個店の入店客が増え、事業が活性化するということが期待できる情況ではありません。法律の趣旨が、“来街者を増やすことで事業機会を拡大する”ことであるならば、大前提として組合員の“事業機会をモノにする能力”についてシビアに検討した上で、「モノにする能力」、当社のいう基礎体力を錬磨向上する必要性を強調し、かつ、その機会を提案することが喫緊の課題ではないか?
 というように考えるのであります。

その二 「具体的な内容」について

 経済産業省がWeb上で発表している資料によれば、「法」のスキームが想定している商店街活性化事業として次のような事業が列挙されています。

(具体的な事業内容)
■ 商店街の人材育成
■ 商店街での起業支援
■ 商店街の自立化(自主財源づくり)支援
■ 商店街活性化ノウハウ等の提供
■ 常駐商店街支援スタッフの派遣
■ 商店街活性化に向けた地域での支援・協働体制づくりの支援
■ 商店街活性化モデル事例の顕彰・広報
■ 商店街の広域連携、商店街と産地との交流
■ 地域卸売業との連携、ボランタリー・チェーンの活用
■ 地域卸売業の機能向上支援
■ 卸商業団地再整備に関する調査研究
■ 農商工連携や地域資源を活用した販路開拓
■ 商店街のアンテナショップ等を活用した展示会・販売会
■ 消費者と流通事業者とのマッチング

 一見、商店街活性化(その定義については後述)のための事業として適切なメニューのようですが、実はこれらの事業の目的が“商圏内の居住者の来街機会を増やす”という視点で企画される可能性があるということですね。
そうすると、これまでさんざん取り組んできた事業といったい何処が違うのか、ということになりかねません。

 このような問題を提起しているのは、Web上で見る限り、当社だけで、大勢は“来街者を増やす事業?、いいんじゃないの、取り組まないより取り組んだ方がいいに決まっている”ということでしょう。補助率も高くなりましたから利用しやすくなりましたし。
 このような感覚で取り組みますと、具体的な事業内容も例えば「人材育成」の趣旨は“商店街の来街者を増やす事業に必要な人材の育成”ということになるかも知れませんし、「商店街活性化ノウハウ等の提供」も“来街者を増やすためのノウハウの提供”になるのではないか? と懸念されるのであります。

 万一、takeoの懸念があたっているとすれば、新しいスキームは、
①これまでさんざん繰り返してきた“来街者の増大を通じた活性化”という商店街活性化の方向と方法は堅持する。
②商店街の活動力が衰退している情況に鑑み、支援の内容をより拡充する
ということに止まってしまう可能性があるということになりかねません。
商店街組織、リーダーの問題意識次第ですが、従来的事業の無反省的な継続にこのスキームが利用されるようでは、商店街の活性化の実現は遠のくばかり、やがて再起不能に陥ることは目に見えています。

 問題は、「①」的な視点に立って企画される活性化策が、現在商店街が陥っている「劣化スパイラル」からの脱却=活性化実現の方向と方法として適切だろうか、ということですね。

 さて、新スキームでは「商店街活性化」はどのように定義されているでしょうか?
一読明らかなように、定義はされておりません。「商店街活性化事業」については先に見たとおり定義されていますが、肝心の「商店街活性化」とは商店街がどうなるのか、活性化された商店街ではどのような情景が見られるのか、ということは不明です。
「来街者を増やすこと」が商店街・商業者の「事業機会の拡大」をもたらしても、拡大した事業機会が商店街・商業者によって適切に活用されるか、活用する能力が備わっているか、という別の問題がありますからね。(例えば来街者が多く、“日本一賑わう商店街”と太鼓判を押されている商店街でも、そこに立地している各個店が繁昌しているかどうかは別問題です)

 これまでの「来街者の増大による事業機会の拡大」を追求する取り組みの現状を踏まえれば、あらためて、「商店街活性化」とは、商店街の何がどうなることか、“商店街活性化の定義”にさかのぼって考え、定義を基準に“商店街活性化を実現するための事業”を考えることが必要です。

 長くなりますが、ここであらためて「商店街活性化」の定義を考えてみたいと思います。いうまでもなく、これが定まらないと取り組みの方向と方法を定め、事業を計画することが出来ません。
  
 先述のとおり、国も“商店街活性化”を定義しておらず、定説はありません。関係者の多くは商店街活性化=とおりが賑わうこと・通行量の増大という方向で考えているようですが、もはやそういうレベルの定義は役に立たない、むしろ商店街活性化のチャンスを阻害するものだということは、当サイト愛読者の皆さんには既にご承知のところです。

 さて、商店街活性化とは商店街がどうなることか?

 『中心市街地活性化法』では中心市街地に立地する商店街の上位概念としての「中心市街地活性化」について、“当該市街地における都市機能増進及び経済活力の向上”と定義されています。この定義を中心市街地の下位機能でもある商店街の活性化に応用しますと、商店街活性化とは:“当該商店街における都市機能の増進及び経済活力の向上”であると定義することが出来ます。
 商店街活性化をこのように定義すれば、その内容は、
①商店街という都市機能の増進 と ②経済活力の向上 であり、これを生活の場としての都市の下位機能として見れば、①は「買い物の場としての機能の増進」であり、②は①の実現を通じた商業・サービス業の繁昌ということになります。「中心市街地活性化」の定義という視点から行う「商店街活性化」の定義がこうなることに異存の余地はないはずです。 

 商店街のようにその「都市機能」が“経済的機能=物販サービス機能”に特化した街区の場合、「経済活力の向上」は、街区が分担している「都市機能の増進」を実現することで、実現することによってのみ、達成されるのだということをキモに銘じなければならない。

 上で述べたように、「小売商業機能」を“生活の場としての都市”の下位機能ととらえれば、商店街は、「買い物・ショッピングの場」、すなわち商圏内の住民が、買い物・下見・暇つぶしなどを目的に訪れ、そこで過ごす時間を楽しむ空間です。
これを実現することで、経済活力の増進・街ぐるみの商売繁盛を実現することが「商店街活性化」です。

 近時、商店街固有の「ショッピング機能」よりも「コミュニティ機能」を強調する傾向が顕著ですが、これは商店街の「ショッピングの場」という基本機能から派生したもの、ショッピング機能が劣化すると、自動的にコミュニティ機能も劣化しますし、商店街のショッピング機能の劣化をコミュニティ機能の増進で挽回する=経済活力を向上させることは出来ません。

 もちろん、商店街で商店街組織が主催する行事のなかにはコミュニティ性を重視したものがあり、コミュニティの存続・強化に貢献していますが、商店街という街区が「小売商業」という都市機能として成立している以上、小売商業機能が衰退すればそれらの事業を主催する主体は消滅するかも知れません。
商店街が「商業機能」としての役割を果たせない情況に立ち至っても、それでもコミュニティ活動の一環として行事を続けていく、という方向はもちろんあり得ますが、それはもはや商店街活動の一環としての活動というより純然たる当該街区の事業であり、いわば小学校の校庭で行われる盆踊りと同じような性格です。

 ということで、商店街組織が商店街としての存続発展を目指すならば、その事業活動は「小売商業」としての機能の増進、商圏居住者から「ショッピング行き先」として愛顧される条件の整備に注力することが他のどんな仕事にもまして優先されなければならない。
 空洞化に悩む商店街が、恒例のイベント当日に限り賑わいを呈する、とおりには人があふれるが入店客・買い物客はほとんど無い、というのは見慣れた風景です。

 皆さん既にこれまでさんざん経験しているとおり、
①「活性化が必要な商店街」が人出の増を期待してイベントを行う
②イベント目的の人出が入店客・買い物客に変身する
という結果をことを期待するのは、夢のまた夢、イベント来街者の衝動入店・衝動購買を期待することが出来るのは、常日頃、愛顧客で賑わっている個店だけ、というのは常識です。

 さらにいえば
“活性化が必要な商店街は、活性化の実現に必要な基礎体力を持っていない”
のでありまして、来街者の増大を事業機会の拡大として活用する能力を、“活性化が必要な商店街”を形成している“組合員たる店舗は持っていない”のであります。
この「個店の基礎体力の欠如」こそが今日の商店街の現状をもたらしている最大の要因でありまして、したがって、当スキームに用意されている各種事業に取り組むにあたっては、その前に「基礎体力の向上」に取り組むことが不可欠です。
 したがって、掲げられている「人材の育成」は、「来訪者を増加するための事業を推進する人材の育成」ではなく、まず「自店を繁昌させうる人材・能力の育成」であるべきです。
当社が提唱・提供する「クオールエイド流商人塾」は、当社が知る限りではそのための唯一の機会、ということですね。

その三 商店街組織の任務について
 
 いうまでもなくもはや“組合の任務は、来街者を増やすこと、来街者(店前通行量)を入店客・買い物客にするのは個店のしごと”という「役割分担」は不可能だということをしっかり確認することが大切です。
そういうセリフを吐くリーダーさんの店舗自体が“店前通行量を入店客にする”ことが出来ない、というのが「もの余り・店あまり」時代の商店街の実相ですから。

 繁昌しなければならない小売店は自力だけでは繁昌することができない
 活性化しなければならない商店街は自力だけでは活性化することが出来ない

 何故ならば、全盛時代以来、商店街が駆使してきた商売のノウハウは、もの不足&買い物行き先が限られていた時代に有効だったもの、もの余り・店あまりの現代の商圏内居住者の消費購買行動にはマッチしていないのでありまして、これを如何にマッチさせていくか、というところに商店街活性化=都市機能としての小売商業集積の活性化(機能の増進と経済活力の向上)を一体的に実現していく方向と方法があるのだということをあらためて確認、これを“何が何でも”商店街活動の「中核」に据えるという ―難しいがやりがいがあり、商業者である以上やり遂げる以外にない― 仕事に全力で取り組んでいただきたいと思います。

 新しい施策体系を見事活用して活性化を実現する為には、さしあたり今日述べたようなことについては一日も早く商店街の有志と共有し、その輪を広げ、事業としての取り組みの実現を目指すことが先決、当社はその発意段階から実施まで一貫した支援を約束いたします。

☆この記事の続きはサイトで取り組みます。

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  • Author:有限会社 クオールエイド
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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