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「世論調査」の奇々怪々 (訂正しました)

何かと言えば「世論調査」を行い、その結果で紙面を作っていくのが「IT時代」のメディアの流儀のようですが、世論調査とはいったい何か?

 市場調査の手法を利用する場合が多いと思います。
市場調査の場合、動向を知りたい母集団から無作為抽出した「標本」に質問を行う、というのが基本手法ですが、いろいろ問題があります。

①世論調査の対象:実際に調査する人(「標本」ですね)は、調査をしようとする対象(この場合、全国の有権者)の組成分布を反映しておかなければならない。
全国の「有権者登録台帳」から標本を選定し、この人たちを対象に調査を行います。

②標本の抽出:「選挙人名簿」から標本を抽出します。
全国に住んでいる有権者の意向を調査するわけですから、居住地・性別・年齢などの属性の分布を忠実に反映しておかなければならない。標本の抽出には「多段階抽出法」が採用されます。

③標本の数:確率で計算するわけですが、たぶん3,000台の標本数で信頼度95%以上の調査が可能です。

④抽出の方法:母集団(この場合選挙人名簿)の名簿を作り、その中からあらかじめ算定した人数だけ標本(特定の有権者の氏名)を抽出します。

⑤調査
 標本に対する調査は、面接・郵送などが主たる方法ですが、コンタクトを取れない場合、標本に変えて他の人を大体することはできません。コンタクトできなかった標本についてはその分「回収率」が下がることになります。

⑥調査の迫真性
 当該調査が母集団の意向をどの程度反映しているか、ということは、調査設計段階の「信頼度」の設定と「回答の回収数」で決まります。
信頼度は95%~98%位で設定されるのが一般的だと思いますが、「全国の有権者」の調査の場合、標本数は、たぶん、3,000人台に納まると思います。(計算すればすぐ分かりますがW)

 問題は、回答の回収率(と言うか、回収した標本の属性分布)です。
標本中、特定の属性を持つグループの回答が回収できなかったりすると、調査結果は実態から大きく変移してしまいます。
 調査要領が、①調査時間:昼間限り ②方法:固定電話経由 ということになりますと、「回収調査票」の中味が母集団をそのまま反映しているとはとても言えません。

 参考:今日の西日本新聞の「世論調査」
テーマ:『民主次期代表 全国電話世論調査』
************* 以下引用 ***************
調査法:全国の有権者を対象に・・・コンピューターで無作為に発生させた番号に電話を掛けるBDD法で実施した。実際に有権者がいる世帯にかかったのは1444件、うち、1024人から回答を得た。
*********** 引用終わり **************

「有権者」という母集団の意向を調査するという目的で、
①コンピューターで無作為に発生させた番号に電話を掛け、
②有権者がいる「世帯」にかかったのは1444件
③うち、回答を得たのは1024人
ということですが、
Q1 ①の数字と母集団(有権者数)との関係は?
Q2 ②の「世帯」で回答したのは有権者だったか? 
Q3 ③の回答は、「有権者」なら誰でも良かったのか?
と言うことで、まったく「無作為抽出法」による世論調査の体を為していません。
そもそも「有権者」に対する世世論査なら、
①標本抽出は多段階方式
②母集団は各地の選挙人名簿
③標本は名簿から無作為抽出した氏名特定の有権者
④質問するのは②で抽出した特定の個人に限る(代理などはもってのほか)

 調査結果の信頼性は“どれだけ回収出来たか”=回収率とその内容に掛かるわけですが、上記の西日本新聞の調査の場合、それ以前の問題として「母集団の決定」、「標本数の決定」「標本の無作為抽出」という調査のルールを逸脱しています。
上記の調査は、
①手当たり次第に電話を掛ける・・・回数不明
②掛かった電話に「有権者」がいるかどうかたずねる・・・1444回
③いた場合、電話に出て調査に応じてもらう・・・1024人
という方法で行われました。
この場合、「掛けた電話番号の数」も「応答があった1444の電話」も母集団である「有権者数」とはなんの関係もありません。
したがって「1024人の調査に応じた有権者」も母集団の「標本」ではありません。
結局、このような新聞社などがよく行う電話による「世論調査」の対象は誰かと言えば「電話に出た人」としか言いようがありませんから、これら「世論調査」というタイトルのもと報じられている世論調査とは“電話で行った世論調査”ではなくて、“電話に聞いた調査”だということになります。
こういう「調査」のもとづく記事で一喜一憂、右へ左へ揺れ動く政党・政治家があるとすればは情けない限り。

 ちなみに、ホンキで有権者の意向調査をしようと思えば、調査費用を@30,000円、サンプル数を3,000とすれば一調査に一億円内外は掛かることになります。
調査に要する期間は、正確を期すためには個々のサンプルに直接面接することが必要でしょうから、最低でも一ヶ月位は掛かるのではないでしょうか。

 と言うことで、毎週のように「世論調査」を行い、その結果について「解説」するというおなじみのパターンの記事の信憑性は恐るべし、だと思います。
 政党も有権者もこの程度の調査による「有権者の意向」の解説に従うわけにはいきません。選挙間近の今日、各政党はコストをいとわず、しっかりした調査を設計・実施していることと思います。
さらに「設問」という段階でもクリアしなければならない課題がありますから、社会調査は難しい。

 そう言えば、商業集積、商店街などでもアンケート調査を行うわけですが、それなりに形式を踏まえた調査にすることが大事です。やみくもにこなった調査結果を真に受けて施策を講じたりすると、トンデモな成果が得られることになりかねません。

(念のため)
takeoがここで述べているような社会調査についてかじったのは、30年も前のことで、その後、新聞各社が採用しているお手軽な手法で信頼性の高い調査が出来るようになったのかも知れませんW
誰か詳しい人がいらっしゃったらご教示くだされば有り難いです。 

※おことわり:
 当記事については、当初、調査の信頼性=信頼度×回収率と書いて、読者からメールで「調査の信頼性=信頼度×回収率というのはおかしい」というご指摘をいただきました。

 考えてみますと、確かに回収率とともに回収/非回収標本の分布状況など、回収率と直接関わらない偏倚もありますから、調査の信頼性を一概に回収率で判断することは出来ません。
この点、訂正しました。御教示いただいたKing Rexさん、有り難うございました。
なお、回収率と調査の信頼性の関係については、当時の教科書には出ていなかったと思います。回収率が下がれば信頼性が損なわれるのは自明のことですが、調査の信頼性と回収率に一義的な関係はありません。回収率(回収数)と信頼性の関係は、ケースバイケースで判断する以外にないのかなと思いますが、如何でしょうか。

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