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商業活性化をめぐる論争のすすめ

 ご承知のように、数十年にわたる商店街活性化の取り組みにおいて、活性化の方向と方法をめぐる論争はほとんどありませんでした。
それもそのはず、こうすれば商店街は活性化できる、という方向と方法についての理論的な立場が明示されることが無かったからです。

 中活法が制定され、商店街活性化が中心市街地活性化として都市経営上の大きな課題と位置づけられるようになってからも、現在に至るまでこの傾向は続いており、全国各地で取り組みが失敗した、挫折したという話はよく聞かれますが、何故失敗したのか、失敗した取り組みはどのような理論・仮説に基づいて組み立てられていたのか、といったことについての反省はほとんど公表されていません。

 その結果、失敗事例が教訓として後続の都市に活用されることは無く、先行都市において密かに「やるべきではなかった」と総括されている事業が、他には成功事例と伝えられ模倣されるということもあります。模倣の結果は勿論失敗の繰り返し。
どうしてこう言うことが起こっているのでしょうか?

 そもそも商店街活性化、中心市街地活性化の取組は、いったいどのような理論・仮説に基づいて計画されているのか?
これまで関わったことのある人は良くご承知のとおり、活性化の取組において「この取組はどんな理論に基づいて計画したか」ということはほとんど問題にされることがありません。
言ってみれば、理論などは無関係、理論などを云々する暇があったら活性化に必要な条件をさっさと整えろ、事業に取り組めというのが大方の取り組みがその基礎にしている考えです。

 新自由主義の挫折であらためてにわかに脚光を浴びることになった経済学者・J・M・ケインズは、
“経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合も間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。
事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。
どのような知的影響とも無縁であるとみずから信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。権力の座にあって天の声を聞くと称する狂人たちも、数年前のある三文学者から彼らの気違いじみた考えを引き出しているのである”(『一般理論』)
と述べています。
商店街、中心市街地活性化に関わる実際家の皆さんにしっかり噛みしめていただきたい言葉です。

 「理論」などという言葉には滅多に合うことのない商店街活性化、中心市街地活性化の取り組みにおいても、その実践は好むと好まざるとに関わらず、自覚の有無に関わらず、ある理論的立場を基礎におこなわれており、誰であれ、阿蘇の思考過程は理論に依存しています。
とするならば、自分たちの商店街活性化の取組は、いったいどのような理論に基づいて組み立てられているのか、確認して見ることが必要ではないでしょうか?

 あらためて確認してみると、場合によってはとんでもないおバカな「理論」に基づく取り組みだということになるかも知れません。そういう場合は一日、一刻も早く取り組みを中止して当該「理論」を破棄するのが当然です。

 このように考えてきますと、あらためて「失敗事例についての総括がまったく公開されていない」という事実にぶつかります。

 総括がおこなわれず、失敗を導いた適切ではない理論が相変わらず大手を振って通用していると何が起こるか?
これからも同じような失敗を繰り返す事例が起こるということですね。
バカな話ではありませんか。
失敗が公表され、その原因がその取り組みが知らず知らずのうちに依存していた「理論」に原因があることが分かれば、直ちにその理論を廃棄することになります。
その理論が原因で実践が失敗するということはもはやありません。
 理論の至らなさが関係者に共有されれば、全国の商店街・中心市街地の現場からその理論に基づく実践が放逐され、その分、取り組みは成功に近づくことが出来ます。
 このように考えれば、失敗事例に学ぶ場合、ただ実践面の結果に限らず、その取り組みを失敗させた「理論」の責任、つまり理論としての至らなさをもハッキリ見極めることが必要なことがよく分かると思います。

 現下、全国で取り組まれている活性化の取組がなかなか成功しない根本的な原因として、それらの取組が意識的に、あるいは無自覚的に依拠している「理論」に欠陥があるということは、当サイトで日頃から強く警告しているところです。
しかし、おバカな理論を実践現場から駆逐することはなかなか難しい。

 もっとも簡便な方法は、「活性化への道」を提唱しているそれぞれの理論家が、誤っている・不都合だ、と判断する理論家・実践家の言説を批判的に検討し、その結果を「公共言論」として公開することです。
批判される側特に実務家は、その自分の言説について、特定の理論的立場に依拠しているとは思いも寄らないかも知れませんが、ケインズが指摘するとおり、理論的なプロセスを意識していない言説は、自覚しないまま、過去の誰かが唱えた「理論」に盲従していることが多い。

 目下、【商店街起死回生】コーナーで実務家による青森市の事例報告について批判的な検討をおこなっています。
この作業を通じて、その失敗が依拠した「理論」の至らなさに起因するものであることを確認してください。
出来ればテキストに使ったレポートを作成、講演したご本人が登場し、反論していただくとお互いに得るところが少なくないと思いますが、おそらくは根拠の全くない自信にみなぎっていることでしょうから、Webの大海を当社の位置まで出掛けてくることはあり得ないと思います。

 それはそれとして、当サイトは活性化の取組と実践との関係を以上のように考えますので、今後はこれまで以上に、Web上で見かける商店街・中心市街地活性化をめぐる理論・言説を批判的に検討する公開作業に取り組んで参ります。

 おつきあいいただくと、カントさんではありませんが、自力思考の拡充に大きなゲインがあるかも知れません。

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  • Author:進化する売場研究会
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