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中心市街地の数値目標

 中心市街地活性化、「法」が制定されて本格的な取り組みが始まって8年が経過しようとしています。しかし、残念なことに活性化に成功したという事例がなかなか見あたりません。なぜ、成功しないのか?
活性化が実現出来ないのは、取り組みの目標が具体的で無かったからだ、という批判があります。確かにおっしゃるとおりでありまして、「緑あふれる・・・」とか「歴史・文化・伝統を活かした・・・」といったよく見かけられた抽象的な文言では「中心市街地活性化の一体的推進の目標」、「これを実現すれば中心市街地は活性化される」という機能をもった目標とは思えません。こんな目標を一所懸命追求したとしても中心市街地の活性化(=本来の機能を取り戻すこと)は実現できません。

 ということで、抽象的な文言を並べるのではなく、目的達成に直接つながる具体的な目標を設定せよ、という提言はほんとうにその通りだと思います。

 ところが、ここから先が問題で、「具体的目標を立てよう」という正しい提言が、「活性化するには通行量の増大が必要だ」という先入観と結びつくとどうなるか?

 「具体的目標を立てる」ということが「通行量増大の目標を立てる」となり、さらに「目標管理~評価がしやすいように目標を数値化する」という考えが加わると、「中心市街地の通行者数」が中心市街地活性化の具体的な目標となってしまう。
(まさかと思われるかも知れませんが、実際に「中心市街地の通行者数を○年度に○○人にする」という「中心市街地活性化を実現するための数値目標」としている例がありますからね)

 中心市街地活性化を進めていくについては「具体的な目標」を立てることが大切だ、ということはいいのですが、問題は「具体的な目標」の具体的なあり方です。
 「具体的」と「数値」は違いますからね。

 たとえば「活性化を実現する方向としてショッピングモールを目指す」というのは中心市街地/商業街区/商店街を活性化するための「具体的な目標」ですが、「通りの通行量を○○人にする」というのは、「通行量を増やす」という目的にとっては確かに具体的な目標でしょうが、「中心市街地活性化」という目的にとってはどうでしょうか?

 目的が商店街活性化(新しい「法」の定義では活性化とは「機能増進&経済活力の向上」です)の場合、通行量を増やす、ということを直接の目的にするというアプローチでは本来の達成すべき目標に届かないと思います。

 「通行量を増やすための仕掛け」は目標が具体的な分、こちらも具体的になっています。

居住人口を増やす・・・マンションを建設する
就業人口を増やす・・・オフィスを増やす
来街人口を増やす・・・学校、病院、公共施設を増やす
散策の仕掛けを増やす・・・街路の整備、街並み美化
イベントを増やす・・・毎月欠かさず、空店舗などを利用して
という壮大な取り組みの結果、通行量が増える・・・増えますか?
増えた人口は何を求めて街にやってくるのでしょうか?
「来街目的」はなんでしょうか?
人が歩けば「経済活力の向上」が実現する・・・?
 
 あれこれと「人口増加・通行量増加策」を高じた結果、通行量が増えたとします。しかし、通りに「気に入る店」が無かったとしたらどうでしょうか・・・?

 商店街に街ぐるみで活性化策が必要だということはとりもなおさず商圏内に住んでいる人たちから見て、「気に入る店」「入ってみたくなる店」が少ない、ということを物語っているわけで、そういうまちが肝心のお店の中身についてはほっぽらかしたまま、通りに人を集める算段ばかりしても、繁盛・売り上げということではなんの効果もないのは当然でしょう。
人口がすべてを癒すと考えている人は、想像力が貧困というか、想像力の使い方がマンネリ化しているというか・・・。
 かって、商店街の全盛時代には確かに通りに人があふれていました。そのことを思い出せば、「人通りさえ増えれば繁盛を再現できる」と思いたくなるかも知れません。しかし、当時と今とでは条件が違いすぎます。
①当時はもの不足・店不足、商店街以外に買い物行き先がなかった
②お客は経験不足、お店の誘導に従順に購買した
という時代背景ですから、その当時まちを歩いていたのは、①モノが欲しい、買いたい ②生活経験の少ない 顧客と潜在顧客ばかりでした。
今はどうでしょうか?
①もの余り・店あまり 
②生活体験豊富 情報豊富
という背景のもと、誰もが「買い物行き先」などいくらでもあるというのに、漫然と人を集めれば何とかなる、中心市街地活性化のきめては通行量だ、というのはあんまりという他はない時代錯誤です。

 ということで。
数値目標を立てれば、それが即、中心市街地活性化の具体的な目標を立てたことになり、したがってその数値目標を達成すれば中心市街地活性化が達成される、というようなお話はお話のままで終わり、目的実現にはつながらないと思います。

 こういう流れは、どうして始まったかと言いますと、「人通りの多い街が元気のいい街だ」という「定義」から始まった話です。
その定義のきっかけになったのが佐世保市の中心商店街の状況。

 ご存じのとおり、平日でも・経済的に落ち込んでいても・お店でモノが売れていなくても・人通りはびっくりするするほど多い、ということから「日本一元気な街」と折り紙をつけられた佐世保市の中心商店街ですが、地元ではどのように評価されているか。
http://sasebo.yh.land.to/zatu.html
いろいろと商店街の様子が描かれています。
(たとえば17年6/22~7/24、12/26、18年3/2 などの記事)
「日本一元気がよくてこのままでよい」という意見は地元でも少ないのではないでしょうか。

 目標を設定するのは、「活性化」を実現するため、したがって設定される目標は、これを達成すれば「活性化」が実現される、ということを疑問の余地無く明らかにしておかなければならない。
とフツーに思いますが、如何ですか?

 どうしても数値目標にこだわるのなら、
①1年後に「売り上げが好転した」「商売の存続に希望が持てるようになった」という店主が○%増える 2年後、3年後とどんどん目標数値を上げていく、とか、
②2年後に空店舗率を○%まで下げる
といったものでないと活性化(機能が増進し経済活力が向上する)を評価する指標にはならないのではないか?

 ちなみ、①、②などを数値目標にするのなら、上位目標は当然、「ショッピングモールとしての再構築」ということになるわけで、もちろんこの目標は「中心市街地活性化」のうち「商業街区の活性化」という目的を実現するための「具体的な目標」です。
私は具体的な目標は「商店街をショッピングモールとして再構築する」でOK、問題は実現の手法に現実性があるかどうか、ということだと考えています。
(このことはあらためて。)

 中心市街地活性化に向けて具体的な目標を立てることは必要なことですが、それは「活性化実現の方向と方法」を具体的に選択する、ということであり、方向と方法抜きで抽象的な数値(通行量とか)を掲げて「この数字を達成することが活性化の実現である」「この数値を達成すれば全ては解決する」と言うようにだんだん短絡してしまうのは全然具体的・実践的なことではない、ということです。

ということで、ここからが本論ですが(笑
数値目標主義の皆さんには、繁盛店が一店出来ると街がどう変わるか、という話などはなんの意味もないことでしょう。
人口もちろん増えませんし、通行量も目に見えて増えるわけではない。

 ところが実際は。
繁盛するお店が生まれた、という話はどんどん拡がっていきます。もの余り時代、ものは売られていてもほんとうに欲しいものは売られていない、と思っている人は多いのですから、一度行ってみようか、ということになる。
 お試しで出かけてみて気に入れば、「得意客」となる。得意客とは「この店は私にとって買い物行き先としてぴったりだ」と考えている人のこと、自然と来店頻度も高くなります。
 こういう人が増えてくることが「繁盛店」になるということです。お客が増え・来店頻度が増え・売り上げが上がる・・・・。
この様子に刺激を受けた近所のお店も心機一転、「お客にとっていい買い物行き先」となるよう努力を始める、それをみた隣のお店のお客が「お試し来店」、気に入れば・・。
 ということで、来街者1が来店客数2とか3になりますね。人口停滞・現象時代に繁盛する商店街とはこういう人の動きが生まれる街ではないでしょうか。
 注目していただきたいのは、この間、「人口はただの一人も増えていない」ということです。人口が増えなくてもきれいに成立する繁盛話であり、現に私の守備範囲内では当たり前のこととして起きている事実です。
 これが今すぐ取り組める・取り組みやすくて結果の出る・中心市街地活性化の方向と方法を実践した場合に起こる商店街の活性化=「経済力の向上」現象ですね。

 中心市街地活性化を実現するには具体的な目標が必要だ、というしごく当たり前のことからスタートしても「商店街を活性化するには人通りを増やさなければならない」という思いこみとマッチングされると、「人通りを○○人増やす」などというナンセンスな数値が「具体的目標」になってしまう・・・。

 具体的な目標を設定するに当たっては、何を実現するための目標なのか、この目標を達成すればほんとうに目的が実現されるのか、ということをしっかり検討することが必要です。アタマでは分かっていることですが、「中心新市街地活性化」のように集団で取り組む仕事になると陥ってしまいやすい落とし穴の一つです。
 取り組みをまとめていくはずの「具体的目標」が目的を逸脱した抽象的な数値目標になってしまえばその結果は火を見るよりも明らかです。

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  • Author:進化する売場研究会
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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