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ショッピングモールへの転換

中活法改正直後に書いたもの。
旧中活法挫折の総括を踏まえ、そこで提起されている活性化の方向と方法を継承発展させています。
商店街活性化関係者でもJ法改正以降に参加された人は、なんとなく、『中心市街地活性化は差得要点街とはぁン系の直井は無し』としている人が多いうようなので、警鐘をかねて。
関連文書等は弊社サイトに収録。

はじめに

国は、中心市街地の商業の活性化について、「中心市街地所在の商店街などの商業集積(以下まとめて「中心商店街」という)を一個のショッピングモールとして再構築するという方向を提案しています。(例えば中小企業庁発行の『TMOマニュアルQ&A(平成12年版』など)
 しかし、ショッピングモールとは何か、どのような消費購買行動に対応する商業施設なのか、ということについてはあまり説明されていません。このため、これまでの取り組みでは、モールは単に街区環境の景観的なありかたの特徴を意味するものといった理解で使われており、肝心の商業機能としてのあり方を意味する本来の意味ではほとんど使われていませんでした。

 このため、せっかく「ショッピングモールとしての再構築」という「活性化に向けて実現を目指す方向」が提案されたにも関わらず、提案が「整備改善事業」 と「商業等の活性化のための事業」によって実現を目指す「一体的推進の目標」である、という位置づけが行われなかった、各地の中心市街地活性化は「郊外型 商業との棲み分け」という基本課題を意識しないまま、「中心市街地活性化」を構想する、ということになってしまいました。改正前の「整備改善・活性化法」 のスキームによる取り組みが頓挫した根本的な原因はここにあったのだと私は考えています。

 私は、中心商店街がショッピングモールへとそのあり方を転換することこそがほとんど唯一の中心商店街活性化を実現する方向である、と考えます。この視点から「中心商店街がショッピングモールを目指すということは、一体中心市街地をどのような商業集積として再構築しようとするのか、ということをあらためて確認したいと思います。

 中心商店街の「ショッピングモールへの転換」は、
①中心商店街(中心市街地)の起死回生策である とともに、
②低迷する我が地方都市活性化へのスタート台であり、さらに
③我が国の消費産業(産地・流通)活性化の切り札である
という、きわめて戦略的価値の高い事業です。

 しかし、我が国の商業界において、そもそもショッピングモールとはなにか、ということについて定説があるわけではありません。
「ショピングモールとは何か」まずこのことを考えることから始めたいと思います。

1.「ショッピングモール」とはなにか

 ショッピングモールという概念は、もちろん米国から輸入されたもの、まず、米小売業界における位置づけを考えてみましょう。

 「ショッピングモール」という概念は、例えば「ショッピングセンター」などに比べると新しい言葉です。何故「ショッピングモール」という新しい概念が用いられるようになったのか?
 人々の生活-購買行動が進化した結果、従来のショッピングセンターの3類型(NSC:近隣型ショッピングセンター、CSC:地区中心型ショッピングセン ター、RSC:広域型ショッピングセンター)では上手く表現できない商業機能が求められており、そのような新しいニーズに対応しようとする商業集積の一つ が「ショッピングモール」と総称されているわけです。(商業集積の3類型を参照)

(1)米国の場合、当初モール(本来の意味は並木などで演出された逍遙路)は、リージョナルSCの核店舗間を連絡する通路を意味していました。もちろん、通路の両側には中小規模の専門店(サブテナント)などが連袂出店しています。
(※商店街で用いられる「モール」という用語は、この状況を表面的にとらえ、「景観的に整備された街並み」をあらわす言葉として使われていることが多いよ うです。景観を含めて「ハード」のあり方は、商業集積が果たす役割の一部をになっています。商業機能と分離して「景観」を整備することは「モール」とは言 えません))

 転じて、核店舗を有しない専門店群で構成されたSCを指す言葉としても使われています。現在の主流は、ショッピングモール、ファッションモール、アップスケールモール、ガレリアなどがほぼ同義語として使用されています。

(2)米国のショッピングモール
  米国において「ショッピングモール」は、アップスケールニーズに対応する商業集積(日本では依然として「スーパーRSC」などと従来どおりに分類され ているもの)を指しています。「自分の好みで演出し堪能する生活局面を作りあげるために必要な消費財」の消費購買行動に対応する商業集積が「ショッピング モール」です。
  当然、従来のSC類型には納まらない新しいタイプのSCです。
その新しさは施設の形態や立地などではなく、担当する商業機能が新しいということ、すなわち「ラグジュアリ」ニーズに対応するショッピングセンターがショッピングモールです。

※ラグジュアリィニーズとは:
 luxsuary。ライフスタイルということに引きつけて解釈すれば「毎日の生活(を作りあげる必須品)に楽しみながら付加していく自分の好み。生活を自分らしく演出し堪能する、また作りあげるプロセスを楽しむこと」というような意味。
 「階層的に分相応とされてきた生活」という社会的な「お仕着せ」から離れて「自分の価値観、属意識などに基づいて作りあげる生活、そのような生活を作るために必要な材料」をラグジュアリィという。
「自分らしく自由に作りあげる生活」に必要な材料・情報・サービスの提供を目指す商業集積が「ショッピングモール」である。

(3)我が国のラグジュアリィニーズ対応
 所得と余暇が確保され、生活経験が豊富な個人、社会のライフスタイルに対応する商業集積であり、百貨店(米国の場合、百貨店はもはや「百貨」ではなく なっている。我が国でも例えば福岡天神のZサイド)や大型専門店などはライフスタイル・ラグジュアリィニーズを対象とした業容となっている。
ただし、米国のように「商業集積」全体が特定の消費購買行動をターゲットに業容を構築している、という例は少ない。

※再確認しておきましょう。ショッピングモールとは、ラグジュアリィニーズに対応した業容を作りあげている専門店群で構成されているショッピングセンター、「商業集積」のことです。

※参 考
 「基本計画」策定の過程で私どもが実施した当該都市住民の『ライフスタイル調査』では、「行きつけの店に欲しい商品が無かったとき」、①「買うのを止め る」66.3%、②「見つかるまで探す」13.5%、③「間に合わせで買う」:10.1%、「取り寄せてもらう」4.1%、④その他:6.0%という結果 が出ている。(大都市の話ではない。)

 オーバーストア時代は同時に、「あってもなくても関係ない」店が多く、「無いと生活がつまらない」店が少ないということであり、このような提供する側のニーズとのミスマッチが「消費不況」の大きな要因ではないかと考えられる。

 本格的なオーバーストア時代を迎えている我が国においても、ショッピングセンター間の競争に勝ち抜くためには限定選択した消費ニーズに対する対応を集積 ぐるみで充実させなければならない。どのようなニーズをターゲットにするにせよ商業集積の「ニーズ限定・機能充実」は避けることの出来ない戦略課題となっ ているのである。

 しかしながら我が国の小売業界の理論的レベルは依然としてNSC、CSC、RSCという「対応商圏を基準とした類型」にとどまっており、生活・購買目的別でSCを分類するまでに至っていない。

 ここに新規挑戦者への新しい事業機会が存在する。ラグジュアリィニーズというこれまで我が国の小売業界が意識していなかった新しいニーズへの対応は、 「仮説-改善」の連続で作りあげて行くほかに手法がなく時間とコストを必要とするところから、コンセプトが貧弱なうえ、高いリース料を収益構造の根幹に据 えている郊外型・GMS主導型SCが挑戦し、成功し得ることではない。ここに中心商店街が他に優先して確保可能な大きな事業機会が存在する、というのが私 どもの主張である。

 中心商店街が、モールへ転換していくということは、都市住民のライフスタイルの充実に貢献する、質的に全く新しい消費を喚起することで自分たちの業績を 回復向上させ、街区を商業地として賦活させることであると同時に、モノ余り、店余りに起因する我が国経済の低迷を打破し、新しい経済構造の構築を「川下」 サイドから促す画期的な役割を果たすという、時代的にきわめて重要な課題を担っている。


2.中心商店街からモールへの転換
(1)中心商店街からモールへの転換のフロー
①.『中心市街地活性化基本計画』の「商業等の活性化」推進の目標を「ショッピングモールとしての再構築」と掲げ、所要の事業を計画する。
②『基本計画』を受けて「ショッピングモールへの街ぐるみ転換」をTMO~商店街組織が決定する。
③「行動計画=ショッピングモールへの転換計画」の作成
④分野、時期毎の実施計画を策定・実施。特に「個店の転換」については出来るだけ早い時期からの取り組みを計画する

 大切なことは、関係者の間に「共通の言葉」が成立しているかどうかということす。同じ理論体系のなかで異なった意見を交わす、というレベルが求められます。後述する「商人塾」などで理論を修得することは中心市街地活性化の実現に向けた必須課題です。

 最大の課題は、モールへの転換を実質的にになっている「個店の業容転換」を一定の期間内に実現できるかどいうかということ、この取り組みをどう実効的に構築するか、ということ。

 誰もが経験したことのないレベルの事業であり、商店街組織に任せて成就できることではない。行政をはじめ文字通り都市の戦略課題という位置づけのもと、関係各方面の一致協力した取り組みが不可欠です。

(2)モールの個店への転換フロー

①ショッピング.モールの「テナントミックス」構想作成
②サブテナントとなる個店の「業容転換」への取り組み
③「テナントミックスビジョン」に基づく新規出店の促進

 課題は、商業者といいながら「自店の経営」しか経験のない個店の経営者たちが、どのような動機があったら「自店をショッピングモールのサブテナント」として作り変える=「店づくりの転換」に挑戦する意欲を持つことが出来るか、ということである。


(3)「業容転換」に挑戦する各個店の問題状況

①各個店はモールのコンセプト(お客から見た来街・購買目的)をブレイクダウン、分担するというあり方に向けて「業容の転換」に取り組みます。
②現在、中心市街地所在の個店の多くは、高度成長期までの経営の蓄積(財務&ノウハウ)で経営を続けています。蓄積は底をついているし、ノウハウは陳腐化し役に立たないものが多くなっている実態です。
③特にショッピングモールのテナントにふさわしい品揃え、集荷のノウハウ、新規取引先の発見など「専門分野」の知識・技術が不足しています。
④最近とみに危機意識が強まっていますが、危機意識=挑戦意欲ではありません。中にはこれまでの試行で力を使い果たしたと思っている人もありますし、相当のモチベーションが必要になっています。 5.業績不振が続くなかで体力(財務・人材)も消耗していることは事実です。

(4)スタートに向けた課題

①意欲を喚起するためには、「何 とかなりそうだ」という将来への希望が不可欠です。実践に入る前に、取り組みの目的・方向・環境などについて一定の見通しを持ってもらうことが必要であ り、当然、相当の質・量の勉強、事例視察(成功事例にあらず)=頭のナカミの切り替えが必須である。(これが正真正銘の「ソフト事業」!)
②当社の経験では、スケジュール的にこなしても30時間程度の座学と1~2回の事例視察が必要だが、果たして取り組めるでしょうか?事業が進めばさらに勉強が必要になるが・・・。(「勉強」とは自主、自発ではなく、「必要に迫られ強いられて勉めること」ですね。いやでもやらなければいけないのが勉強です。)
③みなさんは「やれば出来る」という確証として「成功事例」が欲しいことでしょうが、全国的にも始まったばかり、数少ない取り組みであり先行事例は限られます。ただし、「希望を持って取り組んでいる事例」はありますから必要により視察されると良いでしょう。

(5)実務のスタート

①当該中心商店街においてモデルとなる店舗群を抽出する。
②徹底した継続指導と店舗群の切磋琢磨によって「業容転換」に成功する個店を続出させる。
※大切なことは、新しい投資を必要としないこと、業績を落とさずに転換を実現出来ること、漸進的な推進が可能でやり直しが出来ることなどが要件になります。

(6)「個店の転換」のフロー

①当社提供の「商人塾」などで「ショッピングモールへの転換」実務の推進に必要な知識・技術の修得を実現する
②「個店の業容転換」の先頭に立とうという意欲のある有志による試行グループを結成、転換に取り組む。
③研修と実践の連続で「個店の転換」に取り組み成功事例を実現する
④引き続き2期生、3期生と育成していく

以上の取り組みから.「ショッピングモール」が徐々にできあがっていきます。並行して空店舗などを利用した、テナント誘致なども実現が可能になってきます。

※この方法ではショッピングモールとしての再構築の鍵を握る「個店の転換」が個々の店舗のペースに任されており、時間がかかりすぎることが懸念されます。当社では、「ファサード事業を活用した中心商店街のモールへの転換」という手法を完成させています。
こちらを参照のこと。

参考:個店単独の活性化について

 商店街単位での活性化を否定した場合の個店レベルでの活性化策としては、①郊外型SCへの出店、②FC加盟などが考えられますが、いずれもこれから新し く選択するには厳しすぎる道だと思います。都市ぐるみ、街ぐるみでの取り組みに活路を見いだす、というのが多くの店主にとって困難だが希望の持てる最前の 方向です。

 転換にあたってモデル店に名乗りを挙げた店舗は、たとえ街ぐるみモールへの転換が挫折してもその店舗内にこれまでとは比較にならない「材種店」づくりのノウハウが出来ることになり、当面、立地条件が改良されなくても個店レベルでの業績の向上は実現される。


3.その他

(1)中心市街地の「核「である百貨店や大型専門店などにも街ぐるみ活性化の方向と方法についてレクチュア、ショッピングモール実現への参加を要請して共同歩調をとってもらうことが必要です。
彼らも経営改革が必要であり、特にラグジュアリィニーズ対応という方向は、彼らにとっても「導き」となるものですから、協働が実現できます。

(2)従来、個店の改革は、取り組んだからと言って必ずすぐに結果が出るわけでもなく、取り組まなかったからと言って明日から売り上げゼロというわけでも ない、ということでしたが、新しい取り組みには時間が限られています。実践すればすぐに成果が現れてくる、という取り組みであることが必要です。

(3)空き店舗を活用したテナントリーシングは、モデル店群に実績が出始めた後に対応すべき課題です。外部からのテナント誘致の候補となるのは、もちろん 「欠業種店」などではなく、モールを充実させるために必要な「業容」を実現している、あるいは「転換」の意欲を持った「候補者」ということになります。

(3)当面、転換モデル店の規模、配置(街全体のゾーニング)などは現状のままでの取り組みです。
何しろ、競合がない試みであり一挙的に完成を目指す必要は無いし、このようなことの合意にエネルギーを使う時間的な余裕はありません。また、事業に賛同せ ず、我が道をゆく人にとっても街ぐるみの転換は、プラスにこそなれ、マイナスになることはまずないから特段の反対は起こらないはずです。

(4)商店街に残された時間、本当に少なくなっていますが、ショッピングモールへの転換の動きが全国で同時多発し、ノウハウ、テナントの相互交換などが出 来れば成功の可能性、スピードともに飛躍的に向上することでしょう。すでに挑戦した商店街ではこれまでの活性化策には見られない売り上げの向上という実証 が出始めており、視察会が催されるなど中心市街地活性化の実効ある推進への有力な選択肢のひとつとして注目されています。

(5)ハード事業その他の共同事業を街ぐるみで推進、ハードに合わせた店づくりはそれぞれの個店の仕事、というこれまでの活性化事業のレベルではどうにも ならない内外の状況であることについてあらためて説明する必要はないと思います。商店街活性化を実現する方途としての「ショッピングモールへの転換」につ いては、私どもの知る限り、当社の提案が唯一のシナリオのはずです。
転換の実現には確かに困難も予想されますが、ここでは述べていない利点も多く、立地する店舗の活性化、空き店舗の永続的な解消、土地の流動性の向上、周辺 地区への波及等々、市街地全体の活性化の実現に多面的な効果が期待できるということでは、おそらく他に比肩する提案は今後とも出てこないと思います。
 第一、商店街に希望が生まれ、経営者をはじめみなさんに元気が出てくる。これだけは間違いありません。

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  • Author:進化する売場研究会
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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