「空店舗問題」とは何のことか?

 商店街活性化事業のメイン事業の一つに空店舗活用事業があります。空店舗を使って新規創業する人に家賃や売り場改装費を補助しようというものです。多数の都市に普及している事業ですが、反面、期待された効果が得られず、補助期間が過ぎると撤退する少なくありません。
にも関わらず、仕組みを変え、名称を変えてずうっと継続されているのが空店舗対策。

 どうしてこういうことが起きているのか?
あらためて考えて見たいと思います。

「シャッター商店街」は本当に困っているのか
国交省の「空き家バンク」で空き家は減らない
木下 斉 : まちビジネス事業家

紹介している雑誌記事は、著名な「街ビジネス事業家」木下斉さんの論文です。
木下さんは、高校生の頃から商店街活性化に携わっておられ、国の施策にも関わったおられる中心市街地活性化界隈では屈指の専門家さんの一人。
まずはこの木下論文を手がかりに。

 タイトルは「シャッター商店街は本当に困っているのか」となっていますが、本文で言われているのは、「空店舗のオーナーは困っていない」ということで、困っていないから貸したくない、だから空店舗の活用に補助制度を設置しても効果が無い、と言う論理。
空店舗利用について支援するなら、店舗の利用が決まってから「税の減免」などで対応すべき、というご意見です。
空店舗を再利用すれば免税とは、何が何でも空店舗埋めさせる、空店舗を埋めることには公共的な意義がある、と言うことのようですね。

 変な話。
そもそも空店舗利用事業は、困っているオーナーを支援するための制度では無いい、また、制度を利用して出店する新規創業者を支援するための制度でも無い。
ここを間違えると、制度がとんでもない方向に最小化されるので要注意です。
と言っても、日本全国、前商店街の空店舗対さくはほとんど例外なくオーナー、出店者に対する補助事業だと理解されている。その結果、制度はほとんど効果を発揮しないまま、補助金を浪費しています。

空店舗が埋まらずに困っているのは誰か?

いろいろなケースが考えられますが、「商店街活性化」という課題に即して考えれば、困っているのは商店街です。
空店舗が多数あって埋まらないといういことは、商店街の買物の場としての機能が衰退していることを意味します。放っておくと商店街の商業集積としての機能がどんどん劣化します。
昔、商店街が繁昌してたことは廃業する店があって空店舗が発生してもすぐに埋まったものでした。新規出店者は、商店街の中でポジションを確保するために「差別化」した企画をもって出店しました。当時は空店舗が生じることは街の商業集積としての機能が新陳代謝されることを意味していました。
近年の空店舗とは雲泥の差ですね。

活性化の取組が必要な商店街の空店舗は、広域的に起こっている集積間・施設間競争の結果として、商店街がショッピング⑨行き先としての機能が陳腐化―劣化した結果として発生しています。集積としての競争力が低下しているため、空店舗を利用して新規に出店しようという人はいません。
空店舗は借り手がいないまま、閉店したまま通りを「シャッター通り」にしてしまいます。
これで困るのは、商店街そのものです。

空店舗が埋まらないことは、商業集積としての魅力が無い、と言うことですから、出店者が現れるどころか閉店するオーナーが増えていくことになります。商店街の商業集積としての機能は衰退するばかりです。

もうお分かりの通り、空店舗が増える、埋まらないことで困っているのは、オーナーでも新規出店者でも無く、活性化に取り組む商店街自身です。
空店舗対策は、商店街の「ショッピング行き先」としての商店街の劣化している機能を改善するために取り組まれる事業なのです。趣旨としては、ですね。

商店街へのアンケート調査では、困っていることとして「空店舗」が良く取り上げられます。このこと自体はそのとおりですが、本当に困っているのは、商店街のショッピング機能の劣化が進むこと、です。
後発の商業施設は、「ショッピングの場」としての機能の充実を「テナントミックス」で作っています。劣化すればテナントを入れ替えて新陳代謝に努めています。一方、自然生長した商店街はテナントミックスの管理が出来ません。集積している各個店の経営努力を頼りながら「販売促進」「集客イベント」に取り組んでいるのが実状です。
こうした中で空店舗がある、増えるということは不十分な業種構成、店揃え、商店街の魅力はいっそう減衰します。

空店舗対策は、商店街の業種構成、店揃え対策、お客から見た来街目的の充実が目的です。空いたから埋める、と言う問題ではありません。
空店舗対策は、「買物の場としての充実を実現する」という上位目的の一環として取り組まないと成果を得ることは出来ません。

商店街活性化のために取り組まれている様々な事業は、商店街の商業集積としての充実=「店揃え・サービスミックス・空間整備の充実」と、来街訴求(集客)、販売促進事業に大別されます。最も重要なのは、商業集積としての充実に取り組むこと。
空店舗対策はそのための重要な取り組みの一つです。

商店街の売場構成の充実は、
①商店街が広域でになう「商業集積としての性格特性」を決定する。
コンセプトですね。
次に
②コンセプトを実現する爲に必要な商品構成・サービスミックス・景観整備を計画する
③商品構成を担うテナントとして各個店の店づくりを徐々に改善していく
という大きな流れと
➃空地空店舗を利用して不足している業種業態を誘致する
という二つの取り組みで推進します。

空店舗対策は、商店街の商業集積としてのテナンミックスを実現する爲の取り組み、だから補助事業の対象になっているであって地主、家主のための事業ではありませんし、出店者のための事業でもありません。

はじめに商店街が目指す「ショッピング行き先としてのコンセプト」があり、それを実現する「業種揃え・店揃えの最適化」のための計画があり、それを推進するために取り組まれるのが「空店舗事業」という位置づけになります。
これが中心市街地活性化基本計画のスキームです。

上位目標を忘れた活性化事業は、事業を最小化し、矮小化された事業は成果を挙げられず、間違った批判を浴びることにあり、結果として事業全体の意義を損ない参加者の意欲を損ないます。

コンセプト無き商店街―中心市街地活性化が陥っているところです。

「空店舗問題」とは何のことか?

1.空店舗を利用して商店街のテナントミックススを充実させる、という課題だが、取組を導く上位目標が設定されていないために矮小化され、空店舗が活用出来ないこと

2.「空き店舗問題」は、「コンセプト無き商店街活性化」が全般的に陥っているアリ地獄的状況の典型的な一例であること

ちなみに空店舗をエリアで捉える「エリアイノベーション」も上位目標である商店街、商業街区のコンセプトを設定、導きとしなければ目標を達成することは出来ません。
「家主・地主と出店希望者のミーティング」で話をまとめて空店舗を解消する、稼ゲル場所を増やす、というのは上位目標である商店街の商業集積としてのコンセプトが適切に設定されていないと、「持続可能性」を自力のみで維持しなければならないことになります。
もちろん、既存商店群との協働で実現を目指す「商業集積としての充実」という上位目標は雲散霧消しているはずです。


最後に、
空店舗対策に補助金を使うのは、オーナーのためでも新規出店者のためでもありません。商店街の陳腐化・劣化している「商業集積=売り場集積」を改善・改革するプロジェクトの一環として取り組まれる商店街活性化事業だから、公的な支援が組まれています。
オーナーのため、出店者のためではありませんから、推進する側、批判する側ともお間違いの無いように。
ちなみに商店街活性化事業に於いて、あるべき空店舗対策の位置づけについては、当社が提唱する「コンビニエンスマート プロジェクト」を参照してください。

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