目標としての「通行量」と基本計画の挫折

 一般に「指標」とは、対象と相関があり、それをみることで対象の指標に関わる状態を識別することが出来るもののことです。indexですね。
逆に言えば、そういう対象とそういう関係にあるものしか指標として使うことは出来ません。もしそういう関係に無いものを指標として使うととんでもない結果を引き起こす可能性があります。

 温度計の目盛りは典型的な「指標」です。温度との対応が科学的に関連付けられた水銀柱の高さ=数値を読むことで温度を測定することが出来ます。
“温度計をみれば温度が分かる”というのが温度とその指標との関係です。

 さて、ご承知のとおり、中心市街地活性化の取り組みに於いて、商業の活性化の達成指標を「通行量」としている都市がたくさんあります。
 “商店街活性化の取り組みにおいて、通行量を指標にする”ことは何を意味しているのでしょうか?
温度計の水銀柱の高さが示す数値が温度を示していることは科学的な手続きで証明されています。というか、科学的な手続きを経て温度の指標として温度計が作られています。

 一方、商店街活性化の指標としての「通行量」は、どのような手続きを経て、何を根拠に指標というポジションを獲得しているのでしょうか?
“通行量”を計測してその増減を認識することで我々は「商店街の活性化」の何を理解することが出来るでしょうか?

 通行量の増加が目標数値として掲げられる場合、その手続きはおおむね次のとおりです。

1.特定の時期の通行量を「基準」とすることを定める。
2.達成時期において実現を目指す「通行量」を“基準の○○%アップ”として決定する。
3.計画期間中、通行量数値を計測し、目標達成状況を確認する。

 如何ですか。多くの基本計画(最近では『商店街活性化事業計画』も?}の目標設定はこのように考えられていますよね。

 このとき、「通行量」が指標となっている参照相手はいったい何か? ということが問題でありまして、たぶん“街のにぎわい”とされているケースが多いと思います。
では、「まちの賑わい」とは何か?
と、さらに考えてみますと答えはなかなか定まりません。
Q“まちの賑わいとは?”
A“通行量が増えることに決まっている”、
Q“では商店街の活性化とは?”
A“街が賑わうこと”・・・?
といった堂々巡りを続けている間も「街の空洞化」は着実に進みます。
 “まちの賑わい?そりゃ通行量のことだ”で済むなら話は簡単なのですが。

 上位目的は、「商業・商店街の活性化」です。
目標の指標として“通行量”を掲げられるのは、通行量を測れば“街の活性化の進捗度合い”が分かる、という考えに基づいています。
本当に“通行量を測れば街の活性化の進み具合が分かる”のでしょうか?
何故そう言えますか?

 一口に“通りの通行量といいますが、実際に歩いている人たちの歩いている目的はさまざまです。
参照「中心市街地の客(歩行者)相」

 さまざまな目的で歩いている人たちを「通行量」と一括して計測することで何が分かるか?
もちろん、「通行量」は確実に計測できますが、それが「街の活性化」にとって何を意味するのか、ということはこれまで誰も説明していません。

 「旗頭」と思われる藻谷浩介氏の場合は、“元気のいい商店街は通行量が多い”から“街を元気にするには通行量を増やすことだ”そのためには“まちに住む人・来る人を増やせ”という思考プロセス。

 “元気な商店街(藻谷氏の主観にそう見えた)は人通りが多い”ということから、“街を元気にするには人通りを増やせ”、“人通りは「街の元気」のバロメーターだ”という具合に短絡に継ぐ短絡を重ねたわけですが、このプロセスで“通行量と街の元気との因果関係”あるいは“通行量を測れば街の元気が分かる”根拠はまったく明らかにされておりません。

 根拠の代わり?に言われたのが、全国5個所を除いて全都市を廻った、はじめは私費で出掛けた”ということと、“日本一元気な佐世保市四ケ町の賑わいを観よ”ということだけ。
これを聞いて、“え~、全国廻ったんだって、しかも私費で”というところに感銘した人たちが、“日本一元気な商店街”というお墨付きを信じて“バロメーターとしての通行量”を信じ、“目からウロコが落ちた”とはしゃぎ廻った結果、“通行量がすべてを癒す”というスタンダードが出来てしまった。

 全国全都市を私費で何回廻ろうと、佐世保市四ヶ町の通行量がどんなに多かろうと、そのことを根拠に「通行量と街の賑わい、商業活性化との関係」の論証をサボることは許されません。仮にも指標というのなら指標足りうる根拠を理論的に示さなければならない。

 まあ、藻谷さんだけが悪い、ということではなく、通行量と商業の活性化(つまり、自分たちの街、自分の店の)、二者の関係について突き詰めて考えてみることもないまま、“活性化の指標は通行量だ、取り組みの目標数値は通行量だ”という「思いつき」に雪崩を打ってしまった、自分たちでその方向を選択したのだ、という状況を直視しなければならない。

 “こんな「目標話」に乗せられる程度の気合いの入れ方で商店街の活性化を実現するのはムリムリ”というチャチャが周辺から漏れてくることがあっても、あながち目を三角にするわけにはいかないのではないでしょうか。

 内閣府は、認定基本計画のフォローアップ事業の総括報告において、“目標としての通行量”の考え方について、上述のようなレベルとは異なる見解を示し、かつ、“必要により基本計画の見直し”を奨めています。
見直す場合は、もちろん、“目標”も再検討し、“指標としての通行量”や“目標数値としての通行量”もその「根拠」レベルから徹底的に検討し直すことが必要です。

 “目標としての通行量”を掲げている基本計画を持っている都市は、なにはさておき、最優先で「計画の見なおし」に取り組まなければならない。言い換えれば
基本計画の骨格となっている「理論」を見直さなければならない。

 ということが理解されたら、行動に移らなければならない。周囲・諸般の事情に遠慮しての逡巡は許されません。

 
 ちなみに、当社が10~11月頃の開催を計画中のセミナー『中心市街地活性化の論理と戦略』は、「計画の見なおし」という課題への取り組みを検討される都市、新たに計画作成をを検討中の都市、さらに取り組みの支援をビジネスとされる各方面にとって、またとない機会だと考えます。
是非ご参加ください。

 詳細はあらためて当コーナーでご案内いたします。

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