一億章総中流 再び

 今朝の新聞によれば、新党日本の田中康夫氏が選挙演説で“一億総中流社会の再建”を主張したそうです。
「経済の成長戦略」が政権選択のテーマの一つですが、その方向と方法の提示ということになりますと、各党とも明確に示すに至っていない中で、「一億総中流の再構築」は秀逸の政策提唱だと思いますが、如何でしょうか。

 ただし、「実現への道」のシナリオはどう提示されているのか?
ということになるとどうでしょうか。とても“無駄をなくして”ということで実現出来ることでは無いのですが。
 
 当サイトでは、既に何度も“目指せ一億総中流”という趣旨の記事をアップしていますが、「総選挙・投票当日」という本日、あらためてその意義について確認しておきたいと思います。

 「一億総中流」は、いわゆる「高度成長期」における国民の大半による自分のライフスタイルについての評価のことですね。
含意するところは、
①今の生活におおむね満足
②将来に対して大きな不安がない
③明日はもっと良くなるに違いない
というようなことだったと思います。

 こういう生活に対する実感の根拠としては、所得の向上、余暇の増大、日常生活の多様化といったことの進展がありました。
かっての「一億総中流」とは、当時の社会経済事情と国民生活の関係を巧まずして表現していたわけです。

 こんにちの状況において、「一億総中流」をめざすということは、すなわち、
国民の圧倒的多数が自分の生活に対して
①今の生活におおむね満足
②将来に対して不安がない
③明日はもっと良くなるに違いない
という評価を持てる
という社会・経済を実現していく、そのような方向を目指す、ということですね。

 大事なことがありまして、
元祖「一億総中流」が実現されるプロセスはどうなっていたか?
しっかり理解しておかなければならない。
それをそのまんま当時とは様変わりしたかのように見える現在に丸写しするということではなく、「総中流」を実現するための「一般的な条件」というものが無かったのか、あったとすればそれは何か、その一般条件を現下に於いて実現するにはどうしたらよいか、というような問題意識に連なるわけです。

(繁盛店づくり、商店街活性化にどんな関係があるのか?、といぶかる人もあるかも知れませんが、大丈夫、ちゃんとつながりますので、というか繁盛店づくり、商店街活性化の現実性、方向と方法を考える上で不可欠のテーマですから、もう少し読み進めてください。)

 高度成長期の経済社会の一大特徴は、「消費の伸張」であり、それは特にこれまでに無かった家電、自家用車などをはじめ、衣・食・住全般に渡る新・消費財の普及ということです。
これと表裏の関係で進展する民間投資の拡大と消費の伸張が経済を押し上げ、それがまた所得を増やし、新たな消費財の開発・提供を生み・・・、というスパイラルが出来上がっていました。
 
 ここまではだれもが言うことですが、大事なことがもう一つありまして。
それは、消費財の製造・提供のほとんどのプロセスが国内産業、企業の手で行われていた、ということです。
消費財の製造~流通~販売のすべてのプロセスを国内企業が受け持っており、その結果、経済的成果はそれらの企業を通じて社会に還元される、あるいは国穴井産業への再投資というルートを経て拡大還流する、というパターンがあってはじめて「経済の拡大が国民の生活の向上を実現する」という高度成長が実現していたわけですね。

 この良きスパイラルがどうして崩壊したか?

原因は色々あるわけですが、「後知恵」的にいえば、
“「貿易立国」というウソ”に基づく「規制緩和」に大きな責任があった、ということは確実です。
「貿易立国」のはずが、外貨が溜まって還流するということは、とりもなおさず、貿易の成果が国民生活を潤すというパターンが機能していないということですからね。
(これは重要なことですが、今回のテーマとはずれますので、日をあらためて)

 さて、こんにちの経済の特徴を一言で表現しますと、“景気が実感されない”ということではないでしょうか。
“イザナミ・イザナギ以来の景気”などと喧伝されている間も、国民太宗の生活にはまったく実感が無く、それどころか所得・雇用の不安定、生活の先行きの不安がどんどん増大するプロセスでした。
この間、“まず企業を成長軌道に乗せることが先決、その成果を国民一般の生活に波及させる”というレトリックで大企業の成長優先の政策が採用された結果、確かに企業は成長しましたがその成果が国民レベルに波及するということはほとんどありません。

 どうしてか?
こんにち、大企業がやっていることは、もはや、かって高度成長期の企業活動がそうであったようには、「国民の生活」と密接な関係を持っていないからです。
雇用、市場、金融、福祉・・・、何をとっても高度成長期の企業の行動パターンとはかけ離れています。

 大企業の行動パターンは“世界市場で生き残る”こと。
企業が存続するためには、世界にうって出て勝ち残らなければならない、というあまり根拠のない衝動が大企業の行動の基礎となっているのではないか?

 今を去ること二十年の昔、“企業は人を捨て国を捨てる”と喝破したのは、一橋大学の津田教授(当時)でしたが、まあそういうことですね。

 ということで。
この時代に「一億総中流」を再構築するためには何が必要か?

 第一に、「総中流を実現するのだ」という固い決意を持つこと
第二に、実現の方向と方法を考える。脳に汗をかくくらい考える。
第三に、「これだ」と思ったら万難を排し、知恵を出し、工夫を重ねて実現を目指すこと。

 実践レベルとしては、
第一に、GDPの6割以上を占める消費部門の「中味」を大転換すること。
“外需から内需への転換”ではなく、内需の内容を転換する。
端的に言えば、輸入消費財で賄っている部分をどんどん国産品に転換していく、ということです。これが軌道に乗れば、いうまでもなく賃貸している民間投資が活発化します。
それも地方・産地の消費財産業・中小零細製造業の設備投資です。そうしますと、もちろんのこと、雇用・所得、税収・・・、とプラスのスパイラルが発動することになる。
(このあたりをキチンと考えずに主張される「財源の地方委譲」は逆効果、地方間格差はマイナスのスパイラルに落ち込むことは確実です。)

 一億総中流化よ再び、という方向と方法を目指す。
 その第一歩となるのが、商店街活性化を何が何でも実現すること。“輸入消費財の配給倉庫”であるショッピングセンターの向こうを張って、“時間堪能型ニーズのいけ皿となるショッピングゾーン”として中心商店街を再構築することこそが、「一億総中流」の実現を目指す場合、わが国経済の「のるかそるか」の主戦場になります。
中心商店街が活性化されることは、すなわち、「輸入消費財の殿堂」であるショッピングセンターに「お任せ」になっている消費財提供というビジネスチャンスを国内消費財産業のネットワークで置き換えていくことになります。
 さらには行き詰まりが顕著になっている、普及型海外ブランドから国内商品への回帰、ということも課題です。

 わが国の経済が今一度、国民の多くによって実感されるレベルで「豊かさ」を実現するには、「国民総中流化」はたぶん、唯一の方向であり、その達成は「時間堪能型ニーズ」の称揚、その充実に対応する消費財の製造・販売・流通の再構築以外に無いのではないか。
商店街・卸団地・産地という国産消費財の製造販売プロセス全体が「一億総中流」という戦略課題の実現に向かって協働していく、その方向と方法についてシナリオを提示し、所要の施策を講じていく、ということが新しい「成長戦略」だと思われますが・・・。

 政権選択は、同時に国民生活の安心・安定をどのような方向と方法で実現していくのか、ということの選択であるべきですが、残念ながら選択肢は明示されておりません。
この選挙を契機として、方向と方法について各界・各級、実践を担う人たちの間での論議が盛んになり、実践に反映されるとともに、国政レベルでの方向と方法に反映される、という状況が実現するよう、微力ながら、それぞれの持ち場持ち場で頑張っていきましょう。

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