『海軍反省会』

 戸高一成編 『証言録 海軍反省会』 PHP研究所

 “太平洋戦争期にあって、主に中佐から大佐であった中堅幹部士官による、日本海軍の対米開戦に至る経緯、及び海軍の制度、人事などに関する研究会の記録(同書 編者による端書き)”です。
研究会は、昭和五十五年に第一回が開催され、以来、記録されているところでは平成3年4月の第131回まで開催されているそうです。
NHKの番組は、研究会の全体を編集したものでしたが、本書は第1回~10回までの記録です。

 この反省会に先立って、開戦当時重要な位置にあった海軍幹部を集めて、昭和20年12月~翌年1月にかけて「大東亜戦争開戦前の国内情勢に関する座談会」と題する反省会が開催されています。

新名丈夫編『海軍戦争検討会議記録』毎日出版社
本書についての感想は過去記事にあります。
こちらは、開戦の責任をめぐって極東軍事裁判直前に催された「反省会」でありまして、記録は英訳されてGHQにも提出されたとか。動機が不純です。

 今回の『海軍反省会』には、そういう動機は無いようですね。
NHKの番組は反省会の全体を編集したものだったのに対して、本書は長期にわたる会議のうち最初の10回分の記録であり、まだ「佳境」とは言えません。
NHKスペシャルでの衝撃的な発言の数々は、もっと後の会議で行われたもののようです。続刊を期待します。

 感想を一言にすれば“軍人さんもお役人だったんだな”ということですね。お役人とは、“組織の外に組織に先行して掲げられている目的よりも、組織内部の目標、とりわけ自身の処遇と密接に関連する事項への関心が大きい人”のことです。
海軍省部の“省益あって国益無し”という総括が随所に指摘されていますが、省益追求は即自身の利害の追求だったかも知れません。

 もう一つ。
お役人さんたちは“開戦には反対だったが、あれ以上突っ張ると命が危なかった”という言い訳をよくします。はて、軍人とは国家の安泰に命を的にご奉公するのが本領では、ということも。

 人事面では、海軍承行令の問題。
海軍承行令とは年功序列制度のこと。
ハンモックナンバーという兵学校での席次重視と相まって人事の硬直を招いた。
結果、「予算獲得」や「ことなかれ」がはびこり、誰もが望まず、予期しなかった開戦へと雪崩を打った、ということだそうで、何だ、そんなことで開戦したのかよ。

 大東亜戦争は自存自衛の戦争だった、ということですが、昭和16年11月時点で、東条首相は陛下から“開戦の大義名分”を問われて「目下検討中でございます」と答えるレベル・・・・。 バスに乗り遅れまいととるものもとりあえず急いだのですが、肝心のバスが転落してしまいました。

 対米開戦の確信派は、陸軍参謀本部の中堅で何の責任も負いようがないポジションにいた、周知の二人組だけでした。
もちろん二人とも無事生還し、敗戦後もご活躍でしたね。

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