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ポスト工業社会は情報化社会か

ポスト工業社会という表現は、ダニエル・ベル(ハーバード大学名誉教授)が
「脱・工業社会の到来」で論じてから有名になったことは、周知のところですね。
ベルさんは、ポスト工業社会のテーマは知識・情報である、と論じ、「情報化
社会」の先鞭をつけた一人であることもご承知のとおり。

ところが。
 情報・知識が必要なのはポスト工業社会に限られたことではありません。
人間、否、生物一般が、「快を増やし不快を避ける」ことを基準に生を営む
以上、知識・情報の必要性は未来永劫変わることはありません。工業社会
の勝利者を決定するにあたって力のあったのも知識・情報でしたからね。
もちろん知識・情報のうちでも工業社会という時代的な「価値」を生み出す
ことに効能・効果をもたらすものが尊重されたことは言うまでもありません。

 このように考えれば、知識や情報をめぐる工業社会とポスト工業社会の
差は、知識・情報の価値が変わる、と言うことではありません。

 ポスト工業社会においてにわかに知識・情報の価値が高まる、ということ
ではなく、いずれの時代にも知識や情報は必要だが、時代が変わり・価値
が変われば必要な情報、価値のある知識も自ずと変わってくる、ということ
です。ポスト工業社会は知識・情報の社会だ、などと言う認識でこと足りる
と考えていると情報機器の改善・開発レベルに留まってしまうかも。

  では、ポスト工業社会において必要とされる知識・情報とはどのような
性格を持ったものか?それはもちろん、ポスト工業社会の価値を実現する
という営みに効果効能を持つ知識・技術でなければならない。
では、ポスト工業社会の価値とは何か?

 当サイトでは松下幸之助さんの「水道哲学」について何度か考えてきま
したが、水道哲学こそが工業社会の論理、支配的なコンセプトである、と
言えると思います。便利な製品が安価に誰にも入手できる、従来一部の
富裕層に限って可能だった快適な生活が、社会の中にどんどん普及して
いく、これは、「いいものをどんどん安く」というダイエーの創業者・中内功
さんの信念に連なるもの、【流通革命】は水道哲学の流通版実践編とも
見なすことが出来ます。
 
 実は、「水道哲学」が目指したのは、「新しい価値」ではありません。
不便や不自由、欠乏などを解消することは、「価値の増大」と言うよりも
「反価値」「価値の実現を阻むもの」の消滅を目指すものでした。
「もっと便利に・もっとたくさん」ということは、「不快を軽減する」「必要な
こと(好き嫌いを超越して)をするために使う時間を少なくする」、「必要
な物財をコストをかけずに入手する」という課題を解決するものでした。
これらの課題に共通しているのは、解決されないと困るが解決された
からと言って価値が増える訳ではない、と言う性格です。
もちろん、ここでいう「価値」とは、実現したり増やしたりすると充実感や
生き甲斐などを感じられる対象や行為のことです。
つまり、不満要因と満足要因は異なる、という「衛生理論」ですね。

 水道哲学の課題=生活環境の快適という課題がひとまず解決された
時代、新しい課題は、工業社会が生み出した、余暇、便利な道具、快適
な環境などを利用して何を実現するのか、というこれまでより高い段階の
課題ことです。われわれが提唱している「時間堪能」、自分らしい時間を
演出し堪能する、ということが普遍的な目的、課題にというか成り行きと
いうか、そういったことの実現を目指すことが「ポスト工業社会」の最大
公約数的テーマになると思います。
 そうであるとするなら「ポスト工業社会」は、「知識・情報社会」などでは
なく「時間堪能社会」、そこで求められる知識・情報とは時間堪能という
課題に関わるものだ、ということになります。

 念のためにいっておきますが、「ポスト工業社会」とは工業が駄目に
なるとか工業を否定することを目指す社会ではありません。
工業社会の前は農業社会でした。ポスト農業社会としての工業社会
において農業が果たす役割は減るどころかいっそう重要になってい
ます。これからはさらに重要になっていくことでしょう。
 
では、農業社会と工業社会を分別するのは何か?
 私は社会を統制する価値基準(イデオロギー)だと思います。これは
大きくは国家や国際関係のあり方を決定しますし、個々人の価値観や
行動を左右する力を持っています。この価値基準が農業社会と工業
社会では大きく異なる、いうことです。
工業社会の発展を支えてきたのは、生活材の普及という課題、より
効果的な生活材をより効率的に生産し、流通させ、消費させる。
そこでは、農業も当然工業社会の論理に沿って成長発展することが
求められ、事実、農業の生産性、生産物の流通は史上かってない
量と質で展開されています。

  ポスト工業社会において工業は、これまで以上に重要な役割を
果たすことになるわけですが、もはやこれから先、水道哲学の論理が
社会全体の価値基準になるということはないでしょう。
(もしそういうことがあるとすれば、 「ものが行き渡らない」という条件
の社会に変わった時であり、そういう可能性が無いとはいい切れない
ところではありますが、そのことはまたの機会としてひとまずかっこに
入れておきましょう。)

 時代の課題が「時間堪能」であるとすれば、求められる知識・情報は
「時間堪能」を実現するために必要な知識・情報です。限られた時間と
所得を上手に編集して生活を堪能する。時間消費型と時間堪能型。
 前者は工夫して、切りつめ・短縮、コストも落とす、後者は堪能する
ために演出に工夫を凝らし、大道具・小道具にもこだわってしまう・・・。
 区分の基準、手短に言えば前者は「早く終わらないかな、まだこんな
時間か」と早く過ぎることを望む時間、後者は「おっ、もうこんな時間か、
もっと続けたいな」と感じる時間でしょう。

  工業社会の知識・ノウハウは、組織の司令塔に集中すればよかった。
末端では司令塔の意志決定および計画遂行に必要な情報・知識が過
不足無く行き渡り、かつ収集・加工されればそれでこと足りました。
 ポスト工業社会=時間堪能型社会ではそうはいきません。

 ポスト工業社会の知識・情報ニーズについてはもう一度書きます。
今回は「ポスト工業社会は時間堪能社会、情報社会ではない」とことを
確認して終わりにします。。
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