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集客力と通行量は似て非なるもの

 何となく同列に扱われそうですが。
それぞれまったく内容が異なりますから、どう違うのかきちんと理解し、迷わないことが大切です。

 こういうときは、互いにしのぎを削っている郊外のSCを想定して「思考実験」をしてみるとよく分かります。

 競合関係にあるショッピングセンターA、Bがあるとしましょう。競合厳しい中で業績を維持。成長すべく互いに経営戦略~戦術を巡らし、持てる技術の粋を駆使しているとします。
あるとき、Aが競争戦略として「集客力向上」を掲げました。言うまでも無く集客力向上は、SCに限らず小売業に限らず、「客商売」にとってもっとも基本的な業務です。業務というより業務に埋め込まれている経営目的に直結する根幹的目標ですね。
この事業活動のすべてに通流する目標をあらためて「競争戦略」として掲げるということは、Aが深刻な問題情況に陥っていることを物語っているわけですが、そのあたりは思考実験には関係ありません。

 戦略としての集客力向上とは,とりもなおさず、「集客力の再構築」を意味します。このままでは「集客力」が陳腐化し、劣化~空洞化の道をたどる可能性が懸念される。

 まず取り組むのはテナントミックスのチェックです。
既存テナント各店の業容は、Aが追求する「テナントミックスの最適化」の方向に合致しているかどうか?
合致してないと評価されるテナントは改善が求められ、レベルに到達できない場合は、最悪、「選手交代」が言い渡されます。
次にSC全体としてのサービスミックスのチェック。水準は維持されているか、従来のサービスで陳腐化しているところは無いか。
さらに、空間・設備ミックスはどうか?

 ということで、皆さん既にご理解のとおり、集客力向上は小売業の「業容三点セット」=品揃え・サ-ビスミックス・空間構成のチェック、改善であり、必要にその改革にまで至ることが求められます。
商業集積の集客力は、間断無い業容三点セットの最適化の努力によって維持されていますからね。

 さて、Aの取り組はが功を奏して集客力の向上~業績アップを実現したとしましょう。店あまり・もの余りという環境ですからこの結果はSC・Bにとって業績の低下として現れます。

 SC・Aの景況その集客ぶりを見たSC・Bが対抗策として「通行量の増大」を掲げたとしましょう。もちろん、リアルの小売業界では商店街を除けばゼッタイにあり得ないことですが、そもそも、現に試行している「思考実験」が商業集積では“あり得ない”ことを想定しているので仕方がありません。

 SC・Bは、通行量を増加するために何に取り組むか?
とりあえず、人が集まりそうなイベントを企画する ということになります。なるべく多くの人に集まってもらうことが目的ですから、通常の買い物客だけでは無く、ふだんはSCに足が向かないような人まで来てくれそうな企画がいいですね。さらにSCの周辺にマンションでも建つということ無し。

 さて、そういう目的にとってふさわしいイベント企画とはどういうものになるのか分かりませんが、ともかく、そういう企画を立てて実行したら、想定通りにSC内外の通行量が増えたとします。
さて、その結果何が起こるでしょうか。
通行量増大という目標を立てて追求した「競合への勝利」は実現したでしょうか?
この取組で来店したお客のSC・Bへの「愛顧意識」は強められたでしょうか?

 商業集積間の競争は、お客の取り合いですからね。
通行量増加策で増やした通行量が買い物客になり、愛顧客になってくれるだろうか、ということですが、通行量増大策でイベントを目的に新規に来店するお客はいつものショッピングでは他の集積を利用している人たちです。たとえばSC・Aとか。この人達が通行量増大策に釣られてBにやってきたとしましょう。

 この人達はBで買い物をして、さらにこれからは買い物行き先をBにすることにしよう、と思ってくれるでしょうか?
そういうことは期待できません。たかだか通行量増大策に釣られて、たまたま今日だけ来てみただけ、ですからね。
この人達にショッピングを楽しんでもらい、愛顧客になったもらうための取り組みは行われていないのですから。

 一方、集客力向上をめざし、業容の最適化に取り組んだSC・Aでは何が起きているでしょうか?

 と言うように思考実験をしてみると、経営課題:集客力向上と通行量増大はまったく異なるものだということがよく理解されると思います。
特に気をつけることは“それはその通りだが、うちは集客力のことを通行量ということば表現しているのだから、通行量の増大でいいんだ”としてしまうこと。これは必ず“集客力は問題ない、問題はそれをお客が知らないだけ”という理解を生み“通行量さえ増えれば”と短絡します。
ことばは大切に。

 以上、簡単ば思考実験をしてみたとおり、「集客力向上」はとても大事なことであり、しかもこれまでの商店街活性化の主流では問題にされていなかったことです。試行錯誤の結果として“これからは通行量では無い・集客力だ”と示されたのですからこの“転換”の意義をしっかり認識してください。
間違ってもこれまでの「通行量」という目標に加えて「売上増加」という目標が増えた、などと誤解しないように。
いくら通行量が増えてもそれで集客力向上は実現出来ず、したがって“売上増加”も不可能です。

 以上の実験から分かるように、集客力向上と売上増加は同じ目的を表と裏から見ているようなもの、両者の数値目標を達成するのに、それぞれ別の事業に取り組むようではなにも分かっていないことになります。
昔から戦略論では“目標は一つ・単純明快に”という原則があります。あれもこれもと欲張ると“虻蜂取らず”に終わります。
いろいろな目的・目標を満載して取り組まれた中心市街地活性化基本計画の結果がよい例です。

 集客力向上と売上増加、真面目に考えてみたい人は【商店街起死回生】へどうぞ。

※ これはあくまで思考実験であり、実在するSCその他商店街以外の商業施設・集積で日々の業務の目標として「通行量の増大」を掲げているところは日本全国ただの一個所もありません。
そういう小売業界の常識の外にある事業に多くの商店街が疑問を抱かず取り組んでいるのですから、まあ、いくら取り組んでも成果が蓄積されていく形跡が無い原因はこのあたりにあるのかも知れません。
事業に打ち込んでいる間もさらに空洞化が進展するのも当然でしょう。

 だがしかし。
なるほど言われてみればその通りだ、これからは通行量では無く、三点セットの最適化を目標に、まずは隗より始めよ、それぞれ自店の繁盛実現に取り組もう、となり、適切な事業に取り組めば今からでももちろんOKです。集客力を向上する方法と方向を定めて所要の事業に取り組みましょう。

 おっと、既に成功事例が出始めており、手法が確立されているキラリ輝く繁盛店づくりの方法と方向を採用して、点から面、面から線への展開に取り組めば、集客力向上と並行して増加が実現していきます。
現在進行形でキラリに取り組んでいる皆さんよかったですね。

 すでにおわかりのように「集客力」の成果は、もちろん、来店客数・売上高のアップとして現れますが、この“力”は量ではありません。一々数え上げることが出来ない性格の概念です。

 小売業の場合、わざわざ当該店舗・商業集積へ出かける理由・来店目的の大部分は「集客力」が担います。
その内容を当社の用語で言えば、“業容三点セット”すなわち、テナントミックス・接客サービスミックス・空間環境ミックスが「集客力ミックス」です。
もちろん、このうち最も重要なのがテナントミックスであることは言うまでもありません。
“中小小売業の競争力の根幹は業種揃え・店揃えの最適化
である”と中活法:『基本方針』にも銘記去れています。

 さて、述べてきましたが“集客力”は、当該商業集積が担おうとしている商業機能の充実度合いに関わる概念、その充実にアプローチするには、商業を概観するパラダイム(理論)を持っていることが必要です。
と言うことで、またしても結論は商業理論無くして商店街の活性化無し。この点重々肝に銘じておかないとまたしても・・・、と言うことになりかねません。
仏の顔も二度三度、今度こそまっすぐ「繁盛する個店が軒を連ねる商店街」の実現に向けて、ぶれず・ひるまず、邁進しようではありませんか。

書 籍 ご 紹 介

 既に読まれた方も多いと思いますが。

久繁哲之介『地域再生の罠』ちくま新書

 ネットで検索しますとご本人のブログにヒットしました。
ブログタイトル:地域再生プランナー『久繁哲之介の地域力向上塾』

ファイル:『中心市街地活性化・地域活性化と商店街再生を「戦略3C」から問い直す』

以下引用**************************

 例えば、まちづくり専門家と商店街関係者は、商店街の衰退理由に次2点を指摘する。

1.市役所等の郊外移転で、客が減った。 だから「コンパクトシティ」を計画
2.郊外に大型店ができて、客を奪われた。だから「郊外規制」を計画 

 もし、売上減少の改善計画を求められたビジネスマンが、この戯言と同じ事、例えば
1.顧客のオフィスが遠くに移転したから、この顧客との関係が途絶えた。
2.競合が、うちより良い商品・サービスを導入したから、顧客を奪われた。 
 こんな戯言を上司に言えば、「君、もう明日から来なくていい。クビ!」と言われるはず。

引用終わり*************************

 プランナーさん達は、粛然と襟を正して一読・・・・と言わなくてもベストセラーですから読了でしょう。

 あらためて思い当たるに、どうも中心市街地活性化は,中活法において“都市機能の増進及び経済活力の向上”と定義されているにも関わらず、各地の取組では「経済」という側面が軽視されてきたのではないか?
ビジネス機会の再構築であることを忘れ?、法の定義を忘れ、「かっせいか」という定義されない・なにものかを求めて「かっせいかじぎょう」が取り組まれている・・・と見えたりします。
 
 もちろんこれは「商店街活性化」についても言えることであり、儲かってナンボのはずの商店主さん達がよってたかってソロバンを度外視した事業に取り組んでいらっしゃる。

 当サイトは,常々、商店街・商業者を救済することは出来ない,と言っております。皆さんは儲かってナンボなんですからぜひ「もっと儲かるためには」を真剣に考えて頂きたい。皆さんが儲かることがお客の生活に貢献し、地域の活性化に貢献し、日本経済の成長に寄与します。

 さて、久繁さんは“「戦略3C」から問い直した「まちづくり、地域活性化」の提言”をなさっています。
(“戦略3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3Cを先ず把握してから、戦略や計画を立案すべきと説く「ビジネスの基本原理」である。”)

 なるほど。
 ではこの戦略的アプローチを中心市街地・商店街に適用したら、その活性化策はどうなるのか?

ぜひ聞きたいところですが、著者は、

引用スタート*********************

 市民(顧客)が今、最も必要としていて、競合では提供できない機能は何か?
「人との交流、コミュニティ」である。 また、
「食、スポーツ」は交流を促進するし、関連消費を誘発する。

 衰退する地方都市や商店街は、物を売る場から「市民の交流、コミュニティの場」に変革することで再生できる。更には、スローフード飲食店やスポーツ施設を創れば「市民の交流、コミュニティ」を促進し、関連消費を誘発して、街全体の利益・賑わいを高めることができる。

引用終わり************************

 ということで“もはや商店街は商業活性化施策では活性化出来ない”的立場に立っておられるようです。
“市民の交流・コミュニティ”ですか。
誤解をおそれず指摘させて頂くと、どうも批判の厳しさ・的確さと比較したとき、提出されている「対案」の方はなんだか“ありきたり”の感がしないでもありません。
ハッキリ言ってこの種の企画で中心市街地・商店街区を埋め尽くすことは出来ませんし、当該施設の成功が中心市街地全体に均霑することも難しいと思います。

 商業集積である商店街の活性化は、著者が言われる「3C戦略」をしっかり適用して、商店街が開拓すべき潜在事業機会を発見し、それを自助努力としてものにしていくことで実現可能、というのが当サイトのポジション、久繁さんにもぜひご自分が提唱されている戦略的アプローチを駆使して商業集積としての活性化への道筋を示して頂きたいと思います。

 このように真剣に中心市街地・商店街活性化を論じる人に遭遇し、大いに意を強くした次第、空谷に跫音を聴く、という心境かも。

 しかし、ホンキで取り組むとどうしても批判の舌鋒は厳しくなるようですね。人ごととは思えません(笑
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プロフィール

進化する売場研究会

  • Author:進化する売場研究会
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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