通行量神話の発祥

“通行量を増やせば商店街は活性化する”
これはもう迷信だと断言してよいかと思いますが、如何でしょうか。
信奉している人たちにとっては青天の霹靂かも知れませんが。
通行量を増やせば商店街は活性化する、と信じている人たちは、そもそも活性化の定義も不十分、通行量がどの程度増えるとなにがどうなるのか、というようなことは一度も考えたことが無い人、いつかどこかで小耳に挟んだ話を,自分のアタマできちんと検討する手間暇を惜しんだまま、活性化策として採用し、“通行量が増えると街は活性化する、通行量増加に取り組もう”と主張している人たちです。


 四半世紀にわたって業績低迷にあえぐ商店街の店主さん方をはじめ、関係各方面に広範強固に蔓延している、通行量=商店街活性化の切り札という認識はそもそもどこから生まれたのか?
中には藻谷浩介氏が言い出しっぺだと思っている人もあるでしょうが、藻谷氏が商店街について云々するはるか以前から「通行量=切り札説」広く信奉されています。
藻谷氏は後から来てその尻馬に乗っかっただけ。

 神話というのは何の根拠もなく生まれて来るのではなく、その発祥~定着するにあたっては、“合理的な理由”があるわけで、特に、今目の前で実際に起きている状況の説明としてもっとも納得出来る、という条件を備えていると定着しやすい。
「通行量神話」はどのような経緯/根拠をもって生まれたのでしょうか。

 答えは簡単。

 今は昔。大店法をバックに商店街が域内商業施設の配置について強い発言力を持っていた頃。
郊外に大型店が出店すると言う話があると、その出店によって商店街が被る影響を測るため、出店前、出店後の2回、商店街の要所で「通行量調査」が行われます。通行量の減少の程度を測って大型店の出店が商店街に及ぼした影響を測ろうというもの。商店街の通行量=買い物客数の減少分がその大まかな影響というわけです。調査は商業者に対するアンケート調査とセットで行われることが多く、影響の度合いを見るには妥当な方法だと思います。

 問題はここから。

 大型店の影響で通行量が減っているから、通行量を挽回しなければならないという恐るべき短絡が発生しました。

①大型店の出店の影響で買い物客が減り、それが“通行量の減少”として現れている。
ことは明らかですから,当然、
②買い物客を増やす=商店街の商業集積としての魅力をアップしなければならない、
③個々の店舗、売場の充実を図ろう、モデル店を作り点から線、線から面へ拡大して行こう
となるべきところ、

①通行量が減っている,
②このままでは大変なことになる、
③通行量を増やそう、
となったわけですね。

 大型店出店対策会議に集まっている商店主はこの話を聞きながら、商店街最盛期の店前通行量(買い物客だったのですが)を思い出し、そうだ、通行量だ、と一も二も無く賛成。

 疑義を呈する人は、“やってみないと分からないだろう”とか、“なにもしないよりやった方がまし、といったへ理屈で押さえ込んで、通行量を増加するための事業が全国多くの商店街で展開されることになりました。以来今日まで、全国で取り組まれた商店街活性化事業のほとんどが通行量を増加させるための事業だったことはご承知のとおりです。

 全国的に“通行量増加”が取り組まれることになった元々の原因は、大型店出店の影響調査のために行った通行量調査の結果を「商店街空洞化の原因」と見誤り、通行量を増やせば商店街は活性化出来る、と思い込んだこと。ここにあると思いますが、如何でしょうか。
一時、商店街のリーダーさん達に対して行われたアンケート調査などをみますと、衰退の原因として「通行量の減少」をあげる人が大変多かったのですが、これは因果関係の理解が逆、結果として起きていることを原因と取り違えています。
 藻谷などは,この短絡を短絡と気づかず、そっくり真に受けているだけ、ということになります。
普通に考えれば荒唐無稽な藻谷流が,関係者に支持される背景には、先行して“通行量神話”の蔓延があり、藻谷氏はこの神話の掌の上で踊っているだけかも知れません。

 氏が称揚してやまない佐世保市四ヶ町の歩行者通行量は、公共施設サルカスの建設で劇的に回復しましたが、これは商店街を陳腐化したと感じて離れていった30~50代の女性ショッピング客の復帰ではなく、中高生、高齢者の通行の増加によることが地元銀行の調査で明らかになっています。
通行量は増えても街のショッピング行き先としての魅力は衰えたまま、というのが“日本一元気”と評価される四ヶ町の実態です。
実際に街を歩いてみた人にはすぐ分かることです。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花
といいますが、“通行量が増えれば商店街は活性化する”という神話、正体は単純なことだったわけですね。

 商店街活性化、本当に実現したいわれわれにとって問題は、こういう神話が依然大勢を占めている状況において“キラリ輝く繁盛店づくり”を拡大してい化無ければならない、ということですね。
支援センターの個店経営研修事業などの拡充が期待されるところですが、現状はどうなっているのか、情報の公開期待されるところです。

 商店街活性化業界には他にも「短絡傾向」が散見されます。
たとえば空き店舗対策。

 空き店舗が増えている,借り手がいない、このままでは大変なことになる。
ということで取り組まれるのが空き店舗活用事業=補助金を用意して空き店舗利用者を誘致する事業ですね。

 元々商店街に空き店舗が生まれること自体はよくあること、昨日今日始まったことではありませんし、郊外のSCなどでも普通に起きていることです。
商店街全体としては繁盛していても業績がふるわず閉店する、あるいは商売以外の理由で廃業する、と言うことはいつの時代にもあることです。
空き店舗問題とは実は、“空き店舗がなかなか埋まらない”という問題なのです。
商店街全盛期に発生した空き店舗はすぐに埋まりました。
SCの空き店舗も(リーシング専門家の支援もあり)埋まっています。
では、現在の商店街で生まれる空き店舗はなぜ埋まらないのか?

 そもそもなぜ空き店舗の借り手が付かず、増え続けるのか、という根本原因には目をむけず、もっぱら空き店舗が目立つ、という目先のことに目を奪われて右往左往してしまう・・・・。

 取り組むべき空き店舗対策とは第一に、“これ以上空き店舗を増やさない”ための事業でなければならない。
空き店舗対策のこれまでの経緯を見ますと、いったんシャッターの降りた店舗のシャッターを上げることの難しいことが痛感されるはず、それに比べると、営業中の店舗を“繁盛5原則”のもとで繁盛させることの簡単なこと。
繁盛店がどんどん増えてくれば放っておいても空き店舗は埋まっていくはずです。

 ということで。
“問題を取り違えるといくら努力しても問題を解決できない”という“法則”の例としてもまことにぴったりの通行量神話と空き店舗神話を取り上げてみました。
二つの神話の淵源をたどると、“現場で起こっている事象に対応するには、その事象を押さえ込まなければならない”という、より根本的な「ものの見方・考え方」レベルでの“神話”必然的に派生する神話があるのかも知れません。

 とするならば心がけるべきは、“対症療法では活性化を実現することは出来ない”という基本的な「構え」に対して知らんぷりをする関係各方面のものの見方・考え方にこそ活性化が実現できない根本原因である、ということかも知れません。

 商店街の夜明けは近い、といいたいところですが・・・。
有限会社クオールエイド
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