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百貨店活性化への道 (2)  ―岩田屋完全子会社化―

 百貨店業界、今や業界そのものが劣化スパイラルに陥っており、業容三点セットの革新に取り組まない限り、明日の日の出を見ることは出来ません。
果たして業界に拠って立つ地殻が大きく変動している時代という認識があるのかどうか?

 百貨店の活性化、昨日の記事に続いてのアップですが、百貨店活性化への道、何回か断続的に考えてみたいと思います。
今日は、岩田屋の伊勢丹による完全子会社関連から。

 15日に引き続き西日本新聞は、「岩田屋完全子会社化」を大きく報じています。

※引用スタート※
『岩田屋子会社化を発表 三越伊勢丹HD 10月に株式交換』 (2009年6月17日)

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は16日、傘下の伊勢丹の連結子会社、岩田屋(福岡市)を10月に完全子会社化すると発表した。岩田屋株と同HD株を交換する「株式交換」で全株式を取得する。
(中略) 
 福岡市・天神と福岡県久留米市にある店舗の岩田屋の屋号は今のまま残すが、1949年から福岡証券取引所に株式上場している岩田屋は、同8日付で上場廃止となる。

 同HDは経営効率化のため、岩田屋と傘下の三越の支店で2010年4月に分社化する福岡三越(福岡市)を同年中にも経営統合したい考え。岩田屋を完全子会社化することで意思決定を迅速化し、統合を早期に進める狙いだ。(後略)
=2009/06/17付 西日本新聞朝刊=
※引用エンド※

先日の報道された内容で確定したという記事です。
さらに同紙は、『福岡財界は支援継続』と『巨大店誕生 警戒と期待』の二本を15面に掲載、このニュースを特集しています。

後者の記事から興味あるところだけ。

1.業界内からのコメント

■九州百貨店協会:
 2008年の九州・沖縄の百貨店売上高は6082億円で6年連続前年割れ。4月までの売上高は、17カ月連続前年比マイナス。昨秋以降の景気後退で、経営環境はさらに厳しさを増す。

競合他社は、
■博多大丸:
“一体的経営で効率化が進めば、脅威になるのは必至。一丸となって乗り越えなければ。”

■井筒屋(小倉):
“岩田屋とはともに切磋琢磨して来た仲。資本関係が変わってもそれは変わらない。”
ということだそうです。

 理論という「キャップライト(*)」の具合如何で、後で見るように、短いコメントから様々の情報(仮説)が引き出すことができます。

 肝心の岩田屋の経営陣は、記者会見で次のように述べました。

中見出し『「最善の選択」強調』から:

①“想像以上のスピードで進む経営環境悪化に対応するため、最善の選択と判断した”

②“両店で複合するブランドの整理をすすめ、空いた売り場で新たな需要を掘り起こす。カードの一本化も魅力アップにつながる”

③“人材交流や、外商、本社機能一本化で、サービス向上やコスト削減につながる”

④(2011開店予定の博多阪急対策)“岩田屋は岩田屋らしさ、三越は三越らしさに徹底的に磨きを掛けていく”

⑤(岩田屋の増床計画について)“非常に魅力があり、一体的運営でプラスになる場所”
として前向きに進める考え。(“”内は、記事のまま)

 問題点が色々ありまして。
(以下は、あくまでも新聞で報道されていることが同社の「本音」であるという前提で)

 第一に、「経営環境悪化に対応する」という紋切り型の認識について。

 そもそも「経営環境悪化」という認識に問題がある。
環境は変化するのであって、これに対応するのは小売業としては当然のこと。変化を悪化ととらえる時点で「対応」の幅が「既定の枠」に止まることが示されています。
以下の「対策」は、すべてこれまでの「既定の枠」内の対策になっていますからね。
 今どきの環境の変化は、既定路線でいこうとするものにとっては“急激かつ先の見えない悪化”ですが、変化を変化として受け止め、虚心に対応しようとするものにとっては千載一遇のチャンスかも知れません。
小売業は、経営環境を自ら左右することは出来ませんから、変化を見極めしっかり対抗していくことが古来、繁盛の秘訣でしょう。
この点、商店街およびそこに立地している各個店にも通じることです。

 「環境悪化」への対応として
①営業の効率化 と、②経費節減 を目標に、組織再編とコスト削減に取り組む、ということですが、ぜんぜん対策になっていないのではないか?

問1 人材交流や外商・本社機能一体化で「サービス向上」が実現しますか?

 実現するためには、これらの取り組みの上位目標が示され、それを達成する方向で施策のコンテンツが決められるべきですが、もちろん、目標は「環境悪化対応」ですから既定枠内の話になってしまいます。「コスト削減」メインとなるのではないか。
 問題は、コスト削減によって品揃えの充実、サービスの向上を実現できるか、ということ。そういう志向を持ったコスト削減でないと「千載一遇」を満喫することは出来ませんが。

問2 「両店で重複するブランドの整理をすすめ、空いた売り場で新たな需要を掘り起こす」そうですが、結局、ブランドテナントを増やすこと。統合及び増床で圧倒的な売場を確保してブランドを配置、ブランドの量で他社と「差別化」する、という話ではないか?

という感じがします。大艦巨砲主義。
全体としての売場の効率が悪くなるのは目に見えているような気がしてならない。

問3 「環境悪化」に対応する人材育成はどう考えられているか?

 組織の再編・効率化優先に陥り、「経営環境悪化」に対応するために不可欠の「人材育成」が大幅に遅れるのではないか?

問4 そもそも、「経営環境の悪化」は何が原因かということがきっちり押さえられていないのではないか(これは業界の通弊)

 さいわい?、同業他社も「経営環境悪化」対応という基本路線(の混迷)は共通しているでしょうから、いきなり真っ逆さまということは無いかも知れませんが、こちらが「一体化」に取り組んでいる間に相手が環境変化への対応として「業容転換」に取り組み始めるようなことがあれば一大事です。
せっかくの統合が逆効果を生むことになりかねません。

 ということで、中心市街地の華・百貨店も既定の枠で行動する限り、商店街立地の同じ路線を歩む個店群同様、劣化スパイラルの進展を押しとどめることは出来ません。

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 西日本新聞、同じ15面に『シャネルのブティック 井筒屋から撤退』という囲み記事を載せました。

※引用スタート※
 フランスの高級ブランド「シャネル」のブティックが、7月26日に井筒屋本店(北九州市)から撤退することが分かった。個人消費不振でブランド品の販売が落ち込んでいるため。
シャネルの化粧品売場は残る。
(中略)
井筒屋は、「シャネルの採算が合わなくなり、お互いに協議して撤退を決めた」としている。
 井筒屋本体の09年2月期の品目別売上高では、婦人服や身の回り品が1割前後落ち込んでおり、特に海外有名ブランドが大きく低迷しているという。
(後 略)
※引用エンド※
 
 “景気低迷のせいでブランドが売れなくなった”のか、それとも“「普及型奢侈品」の需要が減滅しつつある”のか、どう判断するかで対応策は大きく異なります。
前者に出来ることは、せいぜい、経費節減とか新ブランドの導入くらい。いずれもこれまでさんざん取り組んできたが劣化スパイラルの防止には貢献していません。

 長くなったのでそろそろまとめ。
 
 経営環境の現状を「悪化」と見るか「変化」と見るか、図らすの勝手ですが、どちらの視点を選択するかで対応の姿勢・方向は大きく違います。
視点の違いは行動の違い、その精華の違いへと連なっていきます。これは百貨店に限ったことではありません。

 さて、なんと言っても百貨店は「街の華」、核としての機能を再構築してもらいたいもの、前述したとおり、当サイトでは当分、百貨店の活性化についての論考を断続的に掲載します。
百貨店活性化への道、その基本方針は「業容革新」、つまり皆さんの課題とまったく同じです。
ヒントになることもあろうかと思いますので、連載を読んだり、最寄りの百貨店の売場をチェックしたりされると、いろいろと収穫があるはずです。

 当記事についての諸々は、【商店街活性化】コーナーでどうぞ。

参考:「普及型奢侈」とは:
 当社独自の「専門用語」です。これを理解しないと百貨店・中心商店街再生の方向と方法は会得することが出来ません。
考察:

(*)「理論のキャップライト」については参照:

当ブログの記事、繁盛店のディスプレイから認識論・方法論まで多岐に渡っていますが、何しろ時代は「地核変動」の真っ最中、いずれも商売繁盛・自己啓蒙という常連各位共通の問題解決にとって不可欠と思われるテ-マばかりのつもり、そのつもりでおつきあい願います。
ブログの「秘密のコンセプト」は“読んでいると知らず知らずにアタマが良くなる”ですからね(笑

百貨店・活性化への道

西日本新聞 6月16日
岩田屋 完全子会社化 16日決定 三越伊勢丹HD 取締役会を開催 福証上場廃止へ

※引用スタート※
三越伊勢丹ホールディングス(HD)は16日の取締役会で、傘下の伊勢丹が51%出資する岩田屋(福岡市)の完全子会社化を決定する。岩田屋も同日の取締役会で同HDの完全子会社になることを決める。岩田屋は1949年から60年間、福岡証券取引所に株式上場しているが、完全子会社化に伴い上場廃止となる。

 同HDは、新株と岩田屋株を一定比率で交換する「株式交換」で全株を取得する。岩田屋は16日の取締役会の決定を経て8月にも臨時株主総会を開いて承認を得る。出資比率が高い地場企業も承認の方向で調整中とみられ、総会後に完全子会社に移行する。

 同HDは、地元に密着した地域事業会社として営業基盤を強化するため、2010年4月に分社化する傘下の三越の支店、福岡三越(福岡市)と岩田屋を同年中に統合させる計画。完全子会社化で意思決定を迅速化し、統合への布石とする。統合後も岩田屋と三越の店名や拠点は現状のままという。

 伊勢丹は、岩田屋が経営難に陥った02年に資本参加。福岡銀行や九州電力など地場企業も出資し、経営再建を共同で支援してきた。長年、無配だった岩田屋を地元関係者が支援してきた経緯も踏まえ、株式公開買い付け(TOB)ではなく、グループとの出資関係は維持される株式交換を選択。同HDの増資による既存株主の利益低下も軽微と判断した。

=2009/06/16付 西日本新聞朝刊=

 幾度繰り返してきたことか・ですが、こういうことをしたからといって百貨店が活性化することはありません。
地殻大変動期、百貨店の存在意義をどこに見いだし、現在ありのままの業容から、存在意義を発揚出来るポジションへどう異動していくかということでありまして、当社が提唱する「小売業活性化への道」は百貨店においてもそのままそっくり該当するのであります。

百貨店活性化への道:
①コンセプトを作ったり
②計画を立てたりすることなく
③お金を掛けず
④出来るところから「なし崩し」的に取り組み
⑤上手くいかなかったらやり直す
という取り組みでないと新しいポジションに至ることは出来ません。
もちろん、この間売り上げは落とさないことが肝心です。
きちんと取り組めば、速効で売り上げが増えること確実です。

 合併などで売場外の組織をいじったりというのはこの時期の戦略的な課題ではありません。
「ラグジュアリィ」を理解して、その方向で業容を作り上げていく・仮説~試行が百貨店活性化への最短距離です。

 百貨店創設当時、その使命=事業機会は上流階級のライフスタイルのブルジョアジー(中の上)へのトリクルダウンだったわけですが、その図式を今現在に移せばどうなるか?
ということをしっかり考えると答えが見つかります。

 あらためて、参考図書をば:
①鹿島昇『百貨店を発明した夫婦』
②ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』
③ヴェブレイン『有閑階級の理論』
④ポール・ファッセル『階 級』
学生時代に戻って勉強してみると方向について得るところがあるはずです。何しろ「成功事例」はないのですから自分で切り開いていく以外に方法はありません。
ただし、イの一番にスタートした人・店には試行錯誤という特権が与えられます。

私見では百貨店には創業以来の画期的な事業機会が現前しています。頑張ってものにしてください。
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進化する売場研究会

  • Author:進化する売場研究会
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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