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カント的啓蒙の自修自得

 辞書を引いてみますと
啓蒙:無知の人を啓発して正しい知識に導くこと
などとありますが、こういう定義ではたちまち
「無知」とは何か
「正しい知識」とは何か
という問題が出てきます。
啓蒙とは特定の立場を作っている人が自分の立場を宣伝流布することかよ、という茶々もあり得まして、善男善女はいつも「正しい」と主張される言説を選択することを要求されているわけですが、はて、「正しいと主張される言説の根拠は?」と考えると、それを判断する力は自分で持たなければならない。

早い話。
辞書にいう啓蒙とは、ものごとを知らない「遅れている」人を「正しい知識」を持った人が教え導くこと、でありまして、この場合、
遅れているのは誰か
正しい知識をもっているのは誰か
ということは自称「正しい知識を持っている」側が決めているわけですね。
ふたつ問題がありまして、
その一 自称「正しい知識」が間違っていたらどうなる
その二 教え導いてもらう側はいつまで経っても教え導いてもらう立場から抜け出せないが・・?
ということです。

 見聞きする「教え導く側」のていたらくから、おいそれと啓蒙が実現出来るとは思えないわけです。
(中には、「目からウロコが落ちた」とか、これがダメならむこうがある、などと嬉々?として立場を飛び移る人もありますが・・)
「教え導く」と称する人の持っている知識が「正しい」とは限りませんし。教え導きたいのは「正しい知識」を持っている人だけとは限りませんし。

 ということで、辞書的「啓蒙」には自家撞着(矛盾)があります。

 『啓蒙とは何か』
これまで当サイトで何度か取り上げている カントさんの有名な本ですが、これによれば啓蒙とは「自分のアタマで考えること」であり、啓蒙哲学者カントさんは、この本で「自分のアタマで考えよ」と提唱しています。

 「自分のアタマで考える」とはどういうことか?
これは、遅れている知識、間違っている知識を正しい知識に置き換えることではありません。人から与えられた知識、世間の常識に唯々諾々とする態度は「啓蒙=自分のアタマで考える」とは違います。
(啓蒙とは蒙を啓く、闇から抜け出すという意味です)
他人から与えられる知識、いつの間にか自分の心身の一部になっているような知識に基づいて行動するのではなく、自分のアタマで考えて行動すべきだ、というのが啓蒙の立場。

 ではカントさんの「自分のアタマで考えよ」という提案を受け入れ、自分のアタマで考えてみようと思い立ったとき、われわれが取るべき態度とはどういうものでしょうか?
そもそも自分のアタマで考えるとはどういうことか?

 自分で考えよと言われてもアタマの中にはすでに様々の知識を詰め込んでいますし、いまからリセットするわけにはいきません。
リセットしてもその後になにをどうインストールするのか、という問題もあることでしょうし。

 カントさんの提唱をtakeo的に翻訳すると「人の振りみてわが振り直せ」「われ以外皆我が師」ということです。
人の振りを客観的・批判的に観察し、それを基準に我が振りを評価し、是正すべきを是正する。この作業を通じて自分の振りを作っていくわけです。人の振りをどう見るか、どう自分の振りに反映させるかは、自分で決めなければならない。

 カントさんが特に推奨するのは「公共言論」に関わることを通して、「ものの見方・考え方」について「振り」をなおしていくこと。
その第一として「公共言論」において交わされる相互批判の見聞を通じて「批判のしかた」、批判能力を自得することです。

 カントさんの「公共言論」とは学者が取り組む「どちらの言説が妥当か」をめぐる応酬・議論のことです。
学者が交わす相互批判を見聞することで、「言説を理解し・批判する」という技術を学び、態度を身につける、というのがカントさん的啓蒙です。
面白いのは、「公共言論」は間違った議論でもいいし、教え導こうとする趣旨の言説でもかまわない、ということ。
いずれにせよ、「相互批判」が行われればそれを見聞きする中から言説・ものごとを批判的に吟味する・「批判的態度」を修得することが出来る。

 現在の「公共言論」をみますと、カントさんが期待していたような「知識の妥当性」をめぐって学者さんたちが公共の場で丁々発止とやり合う、という情況はほとんどありません。皆無に等しい。
 Web、特にブログの機能に期待することですね。
中心市街地をめぐる言説やそれをめぐる応酬などをみても心細い限り、中心市街地活性化の実現には自力思考が不可欠ですが、必要な能力・態度をどう自得するか。
当サイトは、一貫して自力思考を提唱しているわけですが。

 珍しく公共言論において激しく相互批判が行われている事例があります。前にも紹介したと思いますが、マックス・ヴェバーの有名な『プロテスタンチズムの倫理と資本主義の精神』をめぐる大論争です。5年くらい続いたかと思いますが、ここに来て一段落したようです。

 これを題材に「批判的思考」の実際を見聞し、自力思考の確立に役立てよう、という大それた企画を思い立ちました。
年末年始、限られた時間ですが有効に使って「批判的思考」を見聞したいと思います。
この際、つきあってみるか、という人の参加をお待ちします。【理論創発】コーナーです。

「学問とは何か、―羽入ー折原論争見聞記―」
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