売り場の内部編制と商業理論

 毎度申し上げているとおり、営利事業としての小売業の売り場(店舗)は、標的とする消費購買行動を基準に

品揃え、提供方法、環境

の三大要素を組み合わせて作られています。
標的顧客相から見て最適の組み合わせを実現することが小売業の仕事です。
リアル/バーチャル、業種/業態、立地や規模、繁盛の有無を問わず、すべての小売業は三大要素の組み合わせです。
三大要素を備えていない小売業は成り立ちません。

三大要素はどう組み合わせているか?
内部編制を分析すると業種業態、企業、店舗の現状を評価することが出来ます。将来を予測することも出来ます。

売り場の内部編制論、これなくして商店街全体の増収増益を実現することは出来ません。現在の収益状況に不満な・繁盛したい個店、空洞化から脱却したい商店街は、内部編制を改革改善しなければならない。

そのとき、不可欠なのが商業理論ですが、この作業に使える内容を持った理論は商学の学会などから提供されていません。
商店街活性化が難しいのは現実の競争相手が手強いからだけでは無く、活性化実現の方向と方法を考えるために必要な基礎理論が提供されていない、ということも影響しています。

通行量増大では増収増益は実現できないよ、と批判して対案を提供してくれる学識経験者がいないのですから。

通行量に限ったことではありません。
理論がなければ実践は「仮説―試行」する以外にありませんが、そこでものを言うのが先行事例。自他を問わず成功した事例があればそれに追随するのが合理的。

問題は、成功事例は本当に成功しているのか、成功事例が解決に成功した問題は、今現在自分が直面している問題の解決成功事例と見なすことが出来るがどうかということ。

もし追随できる成功事例が無い場合は、前人未踏の「仮説―試行」に挑戦しなければならない。
そのとき頼りになるのは理論の力ですが、小売商業、商店街の仮説―試行を導けるレベルの理論が提供されていない、というのが商学の水準なので、自分たちでなんとかしなければならない。すなわち商業理論の構築に参加或いはその企てを応援しなければならない。

とんでも無い状況ですね

☆「売れる売り場」の在り方検討会☆

小売業は存続するためには、売れる売り場を作り・維持し続けなければならない。リアル・バーチャル、有店舗・無店舗、業種・業態、規模や立地を問わず、すべての小売業が実行しなければならない当然の仕事ですね。

売れる売り場とはどのような売り場か?
言うまでもなく、お客に支持される売り場ですが、支持される売り場とはどのような売り場か?どうすれば支持される売り場を作ることが出来るか?
小売業永遠の課題です。

売れる売り場を作るには何よりもまず、売り場は何をどう組み立てて作られているのか、売り場を構成する諸要素の関係はどうなっているか、売り場の構造を理解していることが必要です。

【売り場の必須要素】
小売業の売り場は、
〇品揃え
〇提供方法
〇提供環境
を必須要素として成り立っています。三つの要素のうち、どれが欠けても売り場は売り場として機能することが出来ません。
三つの要素を備えていない売り場はありません。
それぞれの売り場の全体像は異なっていても、その売り場はすべて三大要素の組み合わせで成り立っています。

すべての小売業・売り場に共通する必須三大要素、その関係はどうなって言うrか?お客から支持される売り場の三大要素の関係はどうあるべきか? 
考えてみたことがありますか?

売り場づくりとは三大要素をどう組み立てるか、ということに他なりません。
その組み立て方に『原則』があるのかどうか。
あるとすればそれはどのようなものか?

中小小売業、商店街施策でほとんど手つかず状態にあるのが個店・売り場対策です。空き店舗になると手厚い対策が講じられるのですが、営業している間は店前通行量を増やす、というところまで。言うまでもなく、通行量とお客は同じではありません。
通行量増大策に取り組んだ結果、通行量は増えたがお客は増えず、収益逓減傾向は改善されていない、という事例は少なくない。

立地する中小小売商業者の協同組織、振興組合その他の組織も個店の売り場の在り方については、ほとんど手が出ない。
商店街活性化は、個店の入り口で立ちすくんでいると言って過言ではありません。

毎度のことながら、売れる売り場が作られていなければ、『売るための努力』が実を結ぶことはありません。
売り場は如何にあるべきか?

商店街活性化の成否を左右する個店売場、その在り方は如何にあるべきか?
研究してみる必要がありますね。
これを研究するのが『売り場の在り方検討会』です。
(※中企庁の『商店街政策の新たな在り方検討会』にならってみました。)

タウンマネジメントはイノベーションマネジメント

まちづくり会社、タウンマネージャーが担う中心市街地のタウンマネジメントは、テナントミックスの管理を主体としたショッピングセンターのルーティーンマネジメントではありません。

当面取り組むべきタウン・マネジメントとは、TMOマニュアル風に言えば「ショッピングモールへの転換」のマネジメントであり、これは既存個店群の業容転換プラス空地空店舗の活用で推進する「イノベーション過程」のマネジメントですから、既存のショッピングセンターのマネジメントとは根本的に違います。ここを誤解してテナントミックス=ショッピングセンターの得意技、SC関係者(たとえばコンサルタント、たとえば店長経験者)を招聘すれば何とかなる、などと考えるととんでもないことになります。

彼らは、中心市街地に立地する百貨店、ファッションビル、商店街などの売り場・個店の転換などを手がけたことは一度もないはず、そういうスキルを持っていると期待することは出来ません(個人的にそう言う資質を持った人はいるでしょうが、招聘するのは難しそう)。

日本型GMS=量販百貨店のマネジメントノウハウなどを持ち込まれては、出来ることが出来なくなってしまいます。
このあたり、「魅力ある個店づくり」と並んで、ショッピングモールへの転換の障碍になりかねない「誤った路線」ですからね。
一見、正しい手法のよう見えますから特にご注意あれ。

中心市街地のタウンマネジメントは、中心市街地の計画的転換、すなわち中心市街地所在の商業機能の「革新」プロセスのマネジメントであり、この過程をマネジメントするのは容易なことではありません。
まちづくり会社の皆さんは、おそらく、どのようなスキルが必要かということも積み上げられないと思います。
とりあえず、基本計画で「ショッピングモールへの転換」を打ち出せなかったところは、「転換」=「中心市街地イノベーション」のプロセスについては外部の指導・支援を受けるべきだと思います。
ぜんじゅつのように、適任者を見つけだすのが大変だと思いますが。

中心市街地のマネジメントとは、イノベーション・マネジメント、そんじょそこらのしょっぴんづせんたーなどのマネジメントとは中味が大違いだということはしっかり理解しておきましょう。

それから、「計画は一人で作る」というのはきちんと守らないとだめ、「みんなで作った」からといって計画の内容をみんなが理解していることにはなりませんからね。参加者は何しろ自分たちで作ったわけですから、まさか内容を理解していないとは誰も思いませんから、きちんと理解していなくてもいまさら説明してもらえません。
こういう人たちが商店街の皆さんに計画を説明しても、自分自身が理解していないわけですから説得力がない。結局、せっかくの計画も「作っただけ」で終わってしまうことになる。

結局、商店街、商店主、不動産オーナーさん達が、自分の仕事として取り組まないと成功しない事業は一切組み込まれていない計画ができあがっている。

タウンマネジメントとは、商店街を一個の商業集積として再構築すること、これまでの商店街とは異なるショッピングゾーンへの転換を計画的に推進すること。
他の意味(たとえば通行量増大とか空き店舗利用とか)で使っても目的を達成することは出来ませんから,そのつもりで。

「売り」と「買い」の非対称性

■「売り」と「買い」の非対称性 

非対称性とは、AとB二つを対比したとき、AはBの条件をすべて備えているのに対して、BはAの条件を備えていない、という関係のことですね。

売りと買い、企業経営とは売買差益を求めこれを原資に企業目的を達成し続けることです。であるならば、我々は企業活動の基盤となっている「売りと買い」について、よく理解しておくことが必要です。

商品を売買する、商品をお金と交換するということですが、これには心理的な「等価交換」が成り立っていると仮定しましょう。もちろん「等価」というのは厳密な言い方ではありません。「この範囲ならまあいいか」という「許容範囲」と考えた方が状況に合っているでしょう。

ともかく、売買とは交換が成立すること、売り手と買い手がそれぞれの相手が出す条件を「交換条件」として認め合うことです。
これは相互に認め合わないと成立しません。そこで「売り手」と「買い手」は同一の条件に立っている、対等の立場のように考えられますが、果たしてそうでしょうか?

ここで、売買の場に提出する「交換材料」を比較してみましょう。
売り手側が提出するのは、ある「効用」をもった商品です。これは言い換えれば、ある効用しか持っていない商品ということになります。

他方、買い手側が提出するのは、「お金」です。お金は「商品であればどのような商品とでも交換できる」ものですね。


■あなたにとっての交換の必要性 

あなたはお客に商品を提示して、お金との交換を提案しています。
この交換はあなたにとってどのような意味を持っているのでしょうか?

前述のとおり、営利企業は、売買差益をもって必要経費の原資を稼ぎ出すことが必要です。どんなに優れた企業理念・目的を掲げており・かつ、実際に社会に貢献出来る企業でもその貢献は、NPOをのぞき・これまでのところ、営利活動を通じて開花するわけですから、商品が売れないことには企業としての存続が揺らぎます。

商品を販売する=お客に商品とお金の交換を提案し、応じてもらう、ということは企業にとって他のどんな仕事にも優先するテーマです。
営利企業が商品を販売するのは、経営原資となる売買差益を得るため、商品は売れる・お金に替わるということが実現されなければ企業の目的達成に貢献することは出来ません。

企業経営において商品はお金の代わりをすることが出来ません。
商品をお金と交換する、「営利」とは第一に商品をお金に換えること、第二に、プラスの差益を確保することです。

■お客にとっての交換の必要性 

> 他方、買い手側が提出するのは、「お金」です。お金は「商品であればどのような商品とでも交換できる」ものですね。

あなたの商品はお客の「お金」と交換しない限り、経営に役に立照子とが出来ません。行ってみれば商品は必死でお金の気を引こうとしているわけでありまして、昔の人は「商品は貨幣に恋をする。しかしその恋路は平坦ではない」といっております。

お客にとって「お金」とは何でしょうか?
お金は流動性、いつでも何とでも交換できる流動性そのものですね。
お金を持っていることは、そのお金に見合う商品・サービスをそれが何であれ、自由に手に入れることが出来る、ということです。

一方、お金を商品と交換するということは、何にでも変えられるお金の可能性を一個の商品絞り込み・かつ・二度と交換できないようにすることですね。これは勇気が必要です。
この商品を買うためにこのお金を使う、もしこの商品を買わないとしたら、このお金で何が買えるか?

これはけっこう厳しい吟味になります。
お客にとって選択肢は、ちょっと考えただけで、
1.目の前の商品と交換する
2.代替品を探す
3.全く他の商品を買う
4.お金を使わない
と多様です。
お金を使わない、流動性を維持する、という選択肢が大きいことは、消費者アンケートなどで「気に入る商品がなかった時の行動」を聞くと「買うのを止める」という回答が6割以上になる、ということから明かです。「もの余り」はお店や流通だけではなく、お客の生活そのもにものがあふれかえっているわけですからね。

商品とお金、商品の方は何が何でもお金に成り変わりたいのに対し、お金の方には差し迫ってこの商品でなければならない理由は、たいていの場合、そんなに強いものではありません。

ここに商品とお金、「等価交換」でありながら、そこに期待されている可能性は大きく異なっています。

■「非対称性」を乗り越える 

「売り場づくり」とは、この交換の非対称性があるなかで、継続的に交換を成立させるための仕掛けである、ということが理解されたことと思います。

商品を売る、ということは商品とお金の非対称性を乗り越える、ということです。我々の仕事は、「何でも買えるお金をこの商品と替えてもらう」ということですからね。4つの選択肢があるお金を目の前の商品と取り替える、ということは他の使い道については「あきらめる」ということ、まして家にはものがあふれかえっている・・・。
相当の努力が必要だと言うことをあらためて確認されたことと思います。

なかでも重要なのは言うまでもなく、「商品」です。
商品を使う局面を想定し、その局面にその商品をはめ込んで見て、収まり具合、相乗効果性などを吟味する。
好みにピッタリということはもちろんですが、コーディネート、価格など様々な特性がお客自身が持っている「許容範囲」内にあることが大切です。(「許容範囲」というアイデアについてはあらためて説明します)

皆さんがお客に対してお金との交換を提案している「商品」の多くは、お客の好みがシビアで、許容範囲が狭いことが特徴になっている商品ですね。
「スイートスポット」にジャストミートしないと首尾よく交換してもらえない可能性が高いわけです。

十分吟味した商品をお客の自然なショッピングパターンにフィットした展開で提案する、ということに出来る限りの努力をしなければならない。

■念のため確認 

非対称性について。
とにかくですね。
我々は何としてもお金と商品(在庫)の交換を成立させないといけません。経費の源泉は、商品とお金の交換から、通常はここからだけしか生むことが出来ません。さらに悪いことには許容期間中に交換が成立しないと、交換価値がどんどん下がっていきます。

他方、お客のお金は商品と交換しなくてもぜんぜん平気です。
価値が変わったり使い勝手が悪くなることはありませんし、もっとよい・気に入る商品との交換の機会があるかも知れません。

というように、この非対称性、我々の側にうんと条件が厳しくなっているわけです。
「お客様は神様です、なんとか買ってください」とお願いしたいところですが、あいにくとお客は神様ではありませんから、シビアにしっかり吟味します。

この吟味に耐え得た商品、流動性を維持するよりもこの商品と取り替えよう、そうすると生活がたのしくなる、と判断された商品だけが買い上げられるわけですからね。
あんまりなめたことはできません。

ということで、業容=品揃え、提供方法、提供環境 三位一体の内店づくりに突入です。

間違いだらけの経営ノウハウ

■SWOT分析

 ライリー派、ランチェスター派の批判的検討が一段落、思いがけなく面白がっていただきましたので、ものはついで、よく見かける経営ノウハウを検討してみたいと思います。まずはSWOT分析から。

これ、日本では多くの人が誤解しているようで、まずは我が国で理解されているところから検討してみましょう。

□よく聞かれるSWOT理解

1.SWOTとは、
  S:強み
  W:弱み
  O:機会
  T:脅威 の略です。

2.使い方
  企業内部の強みと弱み、企業を取り巻く環境における機会と脅威を記述することにより、戦略の構築および評価を行うフレームワーク
(Web「経営用語の基礎知識」野村総合研究所)

 つまり、自社の強み、弱みを分析、機会と脅威を分析、マトリックスに記述して戦略の構築・評価を行う、ということですね。
 これだけではなんのことやら分かりません。

■「強みと弱み」とか

> 「戦略を立てる前にまず自社を知る」その手法としてSWOTを分析する、などとおよそ本気で経営戦略について考えたことがある人間なら絶対に間違うはずのないデタラメを書いている例が圧倒的です。

 まずはこちらから。一見、何の問題もなさそうですが実は大有り(W。

 強みとか弱みということは相対的なものでありまして、相手あるいは課題がはっきりしないと自社の現状のうち、何が強みであり、何が弱みなのかということは決められないのであります。

 例えば、一般には「強み」と考えられるであろう「教育訓練の実績が高い」ということも、今後の方針とこれまでの実施内容次第では強みなのか弱みなのか、にわかには判断できません。環境の変化に対応する、という課題を前にしたとき、「社員全員、ランチェスター流で理論武装している」ことは強みか弱みか?
 ということで、社内の状況、何が強みで何が弱みかということは、「何をやろうとしているか」によってがらりと変わる可能性があります。

 こんなことはちょっと考えればたちまち分かることですから、「戦略策定にあたってはまず社内環境を分析する」などと称して、強み/弱みと静態的に評価するのはナンセンスです。
 そもそも、こういう分析をやれば採用すべき戦略が出てくる、そのための作業フローだという理解自体が、おかしい。

 例えば企業規模、例えば店舗規模、商品(製品)構成、市場の状況、業界におけるポジション、競争環境、競合の動向などなど、企業の現状&外部環境は、「これから何をしようとしているか」という評価基準が設定されない限り、評価することが出来ません。一般に「強み」と評価されるであろう、「業界ナンバーワン」という位置も今後の目標次第では「弱み」と考えなければならない場合がいくらでもあり得ます。
 企業の強み/弱み、目標抜きで評価できるというのは戦略策定業務で苦労したことのない人の思いつきかも。
 もちろん、本家では「強み/弱みは、分析に先立って設定した目標を基準に評価する」とされているハズです。

 SWOTに限らず、カタカナビジネスツールは、ハーバードビジネスレビュー経由など米国渡来が多いのですが、もともとの発案者(以下〈言い出しっぺ〉さん)およびその周辺では「思いつき」であることが前提とされている仮説・道具なのに、海を渡り・列島住人の口と耳を経ている間に「有効性が実証された経営技術」、「科学」、「真理」と〈言い出しっぺ〉さんからの距離に比例して評価が高まっていくのがニッポン省思考列島のビヘイビアですね。

 住人の言説によるまどわかしから身を守るには。
はて?と思わされる言説にぶかったら出会ったら「言い出しっぺ」さんは一体何についてどういうことを言っていたのか?ということを自分で確認してみると良いと思います。
例えば。
 ランチェスター派と一口に言いますが、ランチェスターさん~クープマン(?)さん~田岡さん~田岡さん以後の人々と代を経るごとに仮説への姿勢が変化しているはず、「加上原理」ですね。

■「機会」とか「脅威」とか

 外部環境のうち、何が機会で何が脅威か?
 これもまた「当社は何を目指そうとしているか?」ということが前提にされないと間違ってしまいます。
SWOT分析というのは「何を目指すべきか」を決定するためのツールではありません。
何を目指すのか、ということが基準にならないと「機会」も「脅威」もそれとして認識することが出来無いと思います。

 例えば、当社所在地域において抜き差しならない競合関係にある業界ナンバーワン企業が当社所在地域において市場占有率を一挙に倍増するという戦略を発表した。当社にとってプラスかマイナスか?
一般的には、当社が業態転換という目標を立てていればプラス?であり、現状維持ならマイナスでしょうね。こちら側に何の方針もない場合、競合の動向さえプラスともマイナスとも評価できないこともあるはずです。

ということで、強み/弱み、機会/脅威、戦略立案の前提となる環境分析のツールのはずのSWOT、分析評価のツールではない、ということが明らかになりました。(かな?)

 ではSWOTとは一体何だ?
次に野村総研さんの説明を検討してみましょう。

■野村総研では

SWOT分析とは:
>企業内部の強みと弱み、企業を取り巻く環境における機会と脅威を記述することにより、戦略の構築および評価を行うフレームワーク
> (Web「経営用語の基礎知識」野村総合研究所)
ということだそうです。(以下、野村総研を「NRI」と略記)

 列島内通説と異なるのは、「戦略の構築および評価を行うフレームワーク」というところ。「企業内部の強みと弱み、企業を取り巻く環境における機会と脅威を記述する」ということでは通説と同一ですが、位置づけは大違い。

 通説が「分析を基礎に戦略を構築する」すなわち、SWOT分析は戦略の基礎であると考えているのに対して、NRIでは「戦略の構築および評価を行うフレーム」だといっています。
つまり、戦略の前提ではなく、戦略を策定するためのテーブルだということですね。
ではNRIではSWOTというテーブルの上でどのように戦略の策定/評価を行うのか?

■野村総研による講義

> SWOT分析とは:
>>企業内部の強みと弱み、企業を取り巻く環境における機会と脅威を記述することにより、戦略の構築および評価を行うフレームワーク
>> (Web「経営用語の基礎知識」野村総合研究所)
> ということだそうです。
細かいことのようですが。
>>企業内部の強みと弱み、企業を取り巻く環境における機会と脅威を記述することにより というところが?です。

 断定は出来ないのですが、戦略の構築とSWOT記述、どちらが先か?ということをこの説明から考えてみると、まず記述有り、かなと思われます。
まずSWOT分析を行い、その後、この分析を参考に戦略を策定、評価する、と言うように読めるわけです。
 問題は、んじゃ、記述に先立って強み/弱み、機会/脅威を判断する(判断しないと当該象限に配置できない)のは何を基準にするのか、ということが述べられていない。

 普通に考えると、SWOTテーブルを戦略策定の前提ではなくツールに使うということになれば、戦略策定に先だって「目標」は設定済み、ということになります。目標が立てられていてはじめて状況諸要因についてプラス/マイナスなどと評価することが出来るわけです。
 NRIの説明は簡単すぎてこのあたりをどう考えられているのか、いまいちわかりにくいのですが、
①分析に先立って戦略目標は設定済み
②SWOTは目標を基準に「記述」される、ということでしょう。
つまり、
③企業の内外状況はあらかじめ把握されている
④目標を基準に内外状況をSWOTテーブル上にポジショニングする
ということになります。

ここからいよいよNRI流「戦略策定/評価」作業が始まるわけです。


■NRI式分析の基準

> ここからいよいよNRI流「戦略策定/評価」作業が始まるわけです。
次のように述べられています。
**
企業が市場での競争に勝ち残るためには、自社の状況を適切に把握して、競合他社との比較において優位に立てる戦略を打ち出す必要があります。ここで、企業が自社の目指す姿を経営理念として構築し、どのような市場でビジネスを推進するか、事業領域を明確に定義したと仮定します。その企業の経営企画部や各事業部門が、事業領域でどのような戦略を実行すべきかを検討する時に、共通の分析枠組みとしてSWOTを活用しながら議論を行えば、分析結果を各部門が理解しやすい形にまとめることができます。SWOTは多くの企業で認知、活用されているため、共通のフレームワークとして機能しやすいといえます。
ただし、SWOT分析を行えば必ず戦略の構築と代替案の評価が完成するとは限りません。SWOTとは異なる切り口で戦略を検討することにより、適切な分析を実施している場合も数多くあります。
**
以上、http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/m_word/swot.html から。

①企業の目指す姿・市場・事業内容の決定(SWOT以前)
②SWOTによる分析を活用した戦略策定
と言う流れになっています。
ここでSWOT分析は①を基準として行われるのか、あるいは他の基準で行われるのか、今ひとつはっきりしません。

同じwebページでは次のように続いています。
**
プロセスの分析には不向き
例えば、食品メーカーA社が新しいインスタント食品を市場に投入する時にSWOTを用いることによって、自社の「強み」を技術力やマーケティング力、「弱み」を製造コストの高さと認識し、「機会」を新たな市場の創造・開拓による先行者利益の獲得、「脅威」を類似商品の出現やファーストフードの低価格戦略と捉えたとします。しかし、SWOTだけでは、原料調達から顧客に消費されるまでのプロセスにおいて最も利益を稼ぐことができる部分がどこか、また、A社はどの事業プロセスに注目して事業を展開すべきかについての示唆を直接的には得られません。
SWOT分析は、あくまでも分析ツールの1つとして活用し、必要に応じてバリューチェーン分析やファイブ・フォース分析など他の分析フレームワークを活用することが、適切な戦略立案には必要です。
**
「新しいインスタント食品の市場投入」という新しい事業目標に基づいて分析されているように見受けられますね。ところがここからが問題なのです。


■戦略策定の実務

新しい経営目標の設定~戦略策定というプロセスについて。

経営目標の設定:
 これは、所与の諸条件、経営環境において企業の維持存続を図るために何をなすべきか、ということですから、当然ながらSWOT分析に使われる要因などについては目標設定に先立ってしっかり把握されているはずです。状況分析抜きで経営目標を立てるというのはおかしいですからね。つまり、SWOTと呼ぶかどうかは別としてSWOTに記述される内容などは恒常的・継続的に把握されていなければ、目標は設定できません。
次に:
目標を決めると、条件や状況が目標達成にとってプラスに作用する、マイナスに作用する、ということがあらためて明確になりますから、諸条件・環境要因などをSWOTテーブルに配置することが出来ます。

ここからが本番:
SとW、比較秤量して、どのような方策を立てればこの「SとW」の関連するなかで目標を達成することが出来るのか?ということについて考えを凝らします。 OとTについても同様です。

さらに4者の絡み合いの中でどのようなシナリオを描けば目標を達成することが出来るか? ということを考え抜かねばならない。
この過程が「戦略の構築」ですね。
ここからあそこへ、SWOT的状況を上手にくぐって到達する。そのためのシナリオが戦略です。

 SWOTテーブルにおいてどうしても目標達成へのシナリオを描くことが出来なかったら? そのときは目標を変更しなければならない!
目標を変えれば諸要因のSWOTにおける軽重さらには位置関係さえ変化する可能性があります。場合によると、目標AではWだった要因が目標をBに変更したとたん、Sに変わる可能性さえもあるわけです。

 一般に戦略策定過程というのは、戦略の策定に当たるとともに、状況によっては(動員可能な経営資源をどう組み合わせてもコースが描けないときなど)、目標・ゴールを変更することもあり得ます。
「達成可能な目標を設定せよ」と言うことですね。

つまり、SWOTは目標達成のための作業の場であると同時に、状況の中で達成可能なレベルに目標を変更する、という機能も果たすことになります。
SWOTテーブル上に配置された諸条件は、達成目標が変われば配置が変わったり、比重が変わったりします。その結果、あらためて目標達成への「戦略」・シナリオを考えることになる。

と言うようにSWOT分析といいながら、分析するためのツールではなく実は戦略策定のツールだ、というのがSWOTです。


■SWOTによる戦略策定?
NRI said;
>しかし、SWOTだけでは、原料調達から顧客に消費されるまでのプロセスにおいて最も利益を稼ぐことができる部分がどこか、また、A社はどの事業プロセ
>スに注目して事業を展開すべきかについての示唆を直接的には得られません。
**
こういう作業は「目標設定」プロセスで行われることであり、SWOTの守備範囲ではありません。

SWOTは目標設定はしない、あらかじめ設定された目標の達成可能性の探索(シナリオ作成)、評価(達成可能性の評価)を受け持っています。もう一つ、きわめて大事なことは、所与の目標がSWOT分析・戦略策定段階で達成困難となった場合、目標を変更する、という業務に貢献できる、ということです。

実務としてSWOTを使うとすれば、表をにらみながら目標/S/W/O/Tをめまぐるしく操作して最適解=目標達成のシナリオを描く、ということになります。もちろん。こういう作業は戦略業務の常として「たった一人の人間」が行うことが望ましい。

アタマの中に必要なデータは全部はいっている、という担当者が所与の目的・目標を受けて描き上げるのが戦略(案)、この作業が担当者のアタマのなかでどういう風に行われるのか、知っているのは神様だけ、いらっしゃればの話ですが。

SWOTご愛顧の皆さんがおっしゃるように、雁首並べて企業特性/環境与件を列挙して、あ~でもない、こ~でもないと並び替えるのが戦略策定プロセスだと思ったらとんでもないですね。

今までやったことのない人が陥るところかも知れませんが、そういう人はSWOT=正しい戦略を策定するための手法などと勘違いしそうです。そういう人たちが集まってSWOTテーブルを囲みますと・・・・。

もちろん、SWOT分析、使い道はちゃんとあります。


■SWOTによる戦略評価

> もちろん、SWOT分析、使い道はちゃんとあります。

戦略評価。
問題状況における戦略の妥当性を監査するわけですが、これはもちろん戦略立案者以外の職能によって実施されるものです。

このプレゼンおよび作業をSWOTテーブルで行う、というのは有りですね。
しっかり取り組めば、監査機能のみならず、推進に不可欠な理解者が出てくることになります。

あと、関係各方面へのプレゼン用スキームとしてもバッチリですね。
ただし、前述のとおり、戦略を策定するプロセスで有効かというと、そんなことはぜんぜん無いと思います。 


■他の例を一つだけ

例えば
http://www.tdb.co.jp/marketing/mark02.html

環境分析の手法の一つであるとしながら、
1.SWOT分析で自社の環境を客観的につかむ
2.目標設定
3.マーケティング戦略の立案
4.アクションプランの立案
5.実行
というフローに見られるように、目標設定~企業戦略立案を導く「要」と位置づけられています。

SWOTの手法とは、
1.まずは、自社の弱みと強みを分析する・・・基準は(同業)他社
2.外部環境においてビジネスチャンスおよびビジネスに悪影響となる環境・条件の列挙
3.S/W/O/Tを組み合わせて分析、自社の将来ビジョンを策定、最適かつ最強の戦略を立案する
ということだそうです。
他社を基準にする、などランチェスター派が陥りやすそうな誤解ですね。他社なんか基準にしてどうするんでしょうね、差別化でしょうか?

憎まれ口はさておき。
SWOT分析をもとにして当社が目指すべき方向と戦略が策定できる、という考えですが、これはSWOT分析を「活用」する多くのコンサルタントさんに共通するアプローチだと思います。SWOT、いくら眺めてもそこから「論理的に」目標・戦略導き出されることはありません。
ウソだと思うならやってみればよろしい。

「革新」という目標を立てると、経営の主要な部位にこれまでの経営のあり方とは全く異なる要素を取り入れることになります。そうしますと、これまでと同じ企業内外の環境であるにもかかわらず、これまでのSWOTとは異なったSWOT配置が生まれるはずです(そのくらいのことが無ければ革新とはいえません)。

つまり、目標が変われば諸要因のSWOTテーブルにおける配置は変化する。
逆に、この例で主張されているように、経営資源の状況、外部環境の状況などをこれまでどおりの思考パターンで評価・配置したうえで、目標や戦略を考えようとするなら、これまで通りのパターンの目標や戦略しか出てこない。
これで要求されている「新しい目標」「目標を達成するための戦略」が立てられるならいのですが・・・。


■正しい戦略の作り方

> これで要求されている「新しい目標」「目標を達成するための戦略」が立てられるならいのですが・・・。

正しい戦略策定法、つまり、目的と目的達成に関係する諸要因のデータが与えられれば、正しいゴールへの道筋を描くことが出来る、と言う方法はありませんからね。

SWOT分析で立てた経営戦略、ランチェスター理論に基づいた営業戦略、あるいはKJ法で到達した問題解決法などというように、何らかの「解」を導く方法がいろいろ存在しています。
しかし、どの方法であれ、その方法によって解を導きだした、ということをもってその戦略や解答の正しさ・妥当性を主張することは出来ません。解を導く方法は、その結果としての〈解〉の正しさを保証するものではありません。
「正しい答えを導き出す方法」と言うものは無いのです。

「正しい戦略を策定する方法」というものはありません。


■正しい戦略とは

> 「正しい戦略を策定する方法」というものはありません。

方法はありませんが、「正しい戦略」は存在します。
あそこからここへ、我々を到達させてくれた戦略が「正しい戦略」、つまり正しい戦略というのは「勝てば官軍」、終わってみないと分からない(w


■我らの課題

正しい戦略を導き出す方法というものはない。
正しい戦略とは、我々をゴールに到達させた戦略である。

戦略とは持てる力を組み合わせて目標を達成するシナリオである、とか言っておきながら、それはあんまりだ、と言う声が聞こえそうですね(w

んじゃ、戦略ってどうやって立てたら良いのか?
戦略Aと戦略B、どっちがよりよい戦略化ということはどうやって見分けることが出来るのか?

これが分かれば、「正しい戦略」に限りなく近づけるかも、ですね。

■皆さんと確認しておきたいこと

 私は、戦略とはここからあそこへ移行するためのシナリオである、と定義しています。ご承知ですね。

 SWOTについて考えている間に、この当社の定義が「戦略」の定義として本当にぴったりだ、ということにお気づきですか?

 SWOTテーブル、目標を前提に持てる力を組み合わせ、現在~将来の予想される障碍や後押ししてくれる条件などをふまえながら、歩いていく道筋を考え・決定する、と言う作業の場であり、ここで作られているのは紛れもなく私の定義する「戦略」ですね。
(ただし、SWOTがそういう場として適切かどうか、という点についての評価は別の話)

 戦略≠計画、長期計画、経営計画、将軍が作る計画、などなどではないことをしっかり確認してください。


■情景マーケティング

 米国の経営学の先生方は、我々が通常アタマのなかで行っている作業を客観化、ビジュアル化して「○○法」と命名、特許を取るのが上手です。

 当社が開発した標記の技法、これももちろん、通常はアタマのなかで行っている作業をビジュアライズしたものですが、脳味噌に汗をかきながらペーパーとにらめっこ、アイデアを絞り出す、というプロセスでありまして、使い勝手は使ってみてのお楽しみ(W


■戦略の一回性

 いつぞや米軍の戦略定義で、artであり、手作りであり、一回こっきりの「作品」である、といったことを紹介したと思います。

 いかなる戦略であれ、一定の状況における戦略は、特定の時空において、特定の課題に対する解として作られるものであり、他の事例の模倣であろうと何であろうと、今現在直面している課題への解ということでは紛れもなく一回性のしかも当事者が選択したということでは手作りといえないこともありません。

 戦略はart、artがそうであるように戦略もまた「優れた成果(戦略)をもたらす正しい方法」というものはありません。
 ただし、本当に向こうに行きたかったら、到達したい地点を見極め、スタート時点を見極め、調達できる乗り物のうち最適のものを選択すること、もちろん、戦略=乗り物です。

※戦略案の評価
戦略は策定に用いた方法によって差別・評価してはならない。
戦略の評価は、目標達成の可能性を基準に行うのであって、「○○法に基づいて立案した」などということは解としての正しさの根拠にはなりません。
解としての正しさは、方法からは独立、論理的な検討を通じて確認されるべきです。

立案された戦略案の評価にあたっては「SWOT分析」は、一つの方法だと思います。
特に関係者がみんなで取り組めば、「戦略」についての理解を共有することが出来て良いですね。

泰山鳴動して・・・

商店街政策の新たな在り方検討会

支援部長さんの真摯な負託を読んで期待しましたが、中間まとめを見るとこれまでとどこが違うのか、という感じでした。
キモ部分のタイトルだけ紹介しますと:

3. 今後の政策の方向性
3.1 これまでの商店街政策
3.2 今後の政策の方向性
(1) 商店街の空間としての再評価
(2) まちづくりとの連携
(3) 資産所有者の責任
(4) 個店対策
(5) 空き店舗対策
(6) 支援のあり方
ということです。

商業集積間競争の拡大
消費購買行動の多様化
商店街立地の趨勢
という三点セットの環境変化にどう対応するのか、という根本的な課題には今回も到達しませんでした。

委員さんの顔ぶれから容易に推測出来たことではありますが・・・。

「商業集積としての再構築」という最上位目標が立てられない限り、商店街政策が効果を発現できる内容に変わることは出来ないと思います。

コミュニティモールプロジェクト、どのような方法で広宣流布できるか、いよいよ最終局面です。

基本計画はPDCAを回せるか?


中活基本計画は、環境変化へ対応する計画ですから、環境変化を適格に把握していることがまず最初の条件です。「集積間競争、消費購買の多様化、商店街内部の実状」の現在~将来をどう理解し、評価するか? 計画が成功するか否か、まずは取り組む問題が適切かどうかで決まります。
枕詞みたいに決まり文句を並べておいて、後は補助金が利用できる事業を選んで計画数r、というのでは活性化は無理です。
問題を適格に立て、それにふさわしい解決策を計画する、という段階を踏んで計画しないと、「PDCAを回す」と言っても、回りません。

商店街活性化にとって「PDCAを回す」とはどういうことか?
中小企業庁『商店街の将来像を考えよう』
委託先:三菱総合研究所
概要版 『「商店街活動におけるPDCAサイクル活用事業」について』

商店街の将来像を考えるにあたっては、
1.広域商圏の競争状態とその将来予測
2.消費購買行動の多様化
の調査分析は絶対不可欠ですが、さて、どう取り組まれているか?
興味のある人はチェックしてみましょう。
本編は「商店街の将来像を考えよう」で検索。

日本を代表する(たぶん)シンクタンクの「商店街活性化」、「プランニング」の力量が分かる内容になっています。。

 総務省の行政評価の勧告以来?、商店街活性化関係の計画で、「PDCAを回す」というレトリックが流行っていますが、適切な問題状況の分析―課題と目的目標の設定が適格に行われ、かつタイムテーブルが構築されていないと、PDCAは回せませんよ。
基本計画の場合、とても計画とは呼べない、事業目録みたいなレベルですから、PDCAは言ってみただけに終わります。活性化=事業機会としての環境への対応と考えれば、環境の分析評価が一丁目一番地。集積間競争の常態化、消費購買行動の多様化、商店街の集積機能の空洞化の分析等をまったく行わないまま、しかもタイムテーブル抜きで、通行量・空き店舗・販売促進関係の事業群を羅列しても計画としての機能は果たせない。PDCA以前、そもそも計画が「商店街を活性化出来る計画」になっているかどうか、吟味しなくては。
といってもどう吟味すればいいのかが分からない・・・←今ここ。

この状況から起死回生、商店街を商業集積として再構築する,という問題へチャレンジする唯一の選択肢が「コミュニティモールプロジェクト」です。

☆環境変化の三点セット

キラリや商人塾受講済みの皆さんにはおなじみですね。
もうお忘れかな(^_^)

競争の変化(集積間競争)
お客の変化(消費購買行動)
商店街の変化(空洞化)
という全国ほとんどの商店街が今まさにその渦中にあると三点セット、三位一体の環境変化ですね。

商店街活性化とは、この三点セットを「事業機会」に転化すること、厳しい変化を逆手にとって商業集積としての持続可能性を再構築し、 "この変化があったから商店街は存続のチャンスを得ることが出来た" と言えるようになって初めて商店街は活性化への道を確立した、と言えるのです。三点セットを理解せずに商店街活性化を語る勿れ。

商店街を空洞している緩急の変化が三位一体だと分かれば、この三位一体を一体と見なして対応する方法を考えればよろしい。
それが中活法―基本計画における「一体的推進の目標」です。

中活法は、中心市街地・商店街の活性化の方向を「商店街等を一個のショッピングモールに見立てて再構築する」としています。
この構築こそが本来あるべき「タウンマネジメント」なのです。

三点セットの渦中にある広域商圏で、商店街が自力で実現できる商業集積とはどのような性格の商業集積なのか?
どのようなコンセプトの商業集積を目指せば「三点セットの環境変化」をプラスに転じることが出来るのか?

環境変化の三点セットへの対応、「通行量、空き店舗、集客イベント」という既存の「三点セッ」トではとても歯が立たないことは、これまで全国・全商店街の取り組みが実証しています。成功事例はありませんからね。
どうして成功しないのか?
答えは簡単、これまでの活性化事業のレベル、方向と方法では「三位一体の環境変化」に太刀打ちできないからです。

当社の解答は「コミュニティモール」です。
いくつかの都市・商店街でチャレンジが始まっています。
今秋は「コミュニティモール見学会」を開催したいと思います。お楽しみに。

商店街空洞化のメカニズム

「商店街活性化」を一言で表現すると、「来街目的の再構築」です。
商店街、来街目的のメインは当然「ショッピング」ですが、活性化が必要な状況に立ち至っている場合、街区全体で作り上げている「ショッピング目的の行き先」としてのあり方が「陳腐化―劣化―空洞化スパイラル」に陥っている可能性が高い。

 陳腐化というのは、恐ろしいですよ。当方は一所懸命、売場を経営しているのに、突然【競合】が登場すると状況が一変します。

 うちのお得意さんは当然【競合】に「お試しショッピング」に出かけます。行ってみるとわざわざ出店してくるだけのことはある、と思わせる店づくり。
お試しで来たつもりが、すっかり気に入って【競合】の「ご贔屓」になってしまう人があらわれる(2割もいたら大変なことになりますね)。そういう人から見ると、いままで何の不都合も感じていなかった商店街の行きつけの店がにわかに色あせて見える・・・。

 これが「陳腐化」です。陳腐化というのは個店経営が手抜きをしたことが原因で起きるのではなく、後発の【競合】との比較対象の結果ですから、とりあえず効果的な「打つ手」はありません。販売促進を始めいろいろ対策を打ってもほとんど効果が上がらないと思います。
そうすると何が起こるか?
お店が、売場が、劣化します。劣化は売場で起こります。
そのメカニズムは次のとおり。

 陳腐化は一挙に起こるのでは無く、徐々にしかし着実に進行します。陳腐化=向こうの店の方が自分に合っている、という人によるこっちに対する評価です。そう人が出て売上が一割減ったらどうでしょうか?商品の回転が鈍り、売場の鮮度が落ちる、粗利率が低下し、売場の魅力が劣化します。
 粗利率が低下すると経費削減ですね。人を減らし販促を減らし設備更新を延期し、売場は明らかに劣化します。陳腐化は向こうへ移動した人限りのことでしたが、劣化は誰の目にも見える売場の変化です。劣化が進むにつれてお客が減っていく。これが街全体で起こるわけです。当然通行量も漸減します。

 もちろん事態の進展に手を拱いている人はいません。減る一方の客数をカバーするには新規のお客が必要です。店前通行量が激減しているなか、どうやって確保するか?
【加上】が登場します。少ない通行量に確実に自店を視認してもらうには、店をなるべく目立たせなくては。のぼり、看板、ポスター等々
 さらに通行人の足を止める、と称して低価品のワゴンを店頭に繰り出す。
店頭部分だけみると、一体この店は誰に何を提供している店なのか、分からなくなってしまう。正体不明の店に飛び込む勇気のある(暇のある)一見さんは少ないでしょうから新規のお客さんなどとてもとても。
 さらに悪いことが売場で起こる・・・・。
のぼり、看板、ポスターで中の様子が見えないということは、同時に店内から外が見えないと言うこと。新規のお客が入ってこない不可視の売場で何が起こるか?
レイアウト、ディスプレイの劣化、商品管理の不徹底。たまに入ってきた一見さんが立ちすくんで「入らなきゃよかった」と悔やむ売場の出現。

 このプロセスを商店街単位でみれば、「競合」がショッピングセンターだった場合、個店がたどる陳腐化―劣化というプロセスは、そのまま商業集積としての商店街が辿る道です。個店の来店目的が陳腐化・劣化していくと、商店街全体が作っていた「来街目的」が陳腐化・劣化します。その先にあるのが空洞化です。

 先に進む前にここまでのおさらいをしておきます。競合の出現で個店が陳腐化―劣化のプロセスに入ると、商店街全体が陳腐化―劣化します。見て来たとおり。このプロセスを拒み、劣化しない方法があったでしょうか?これはよほど特別の条件がある場合に限られます。多くの商店街は効果的な対応策を講じることが出来ないまま、劣化スパイラルが進んだということですね。

 やがて、体力に問題のある個店から廃業するものが現れます。一般医商店街に廃業者は付き物ですが、いつもは個別経営の問題による廃業、しかしこのたびは違います。集積間競争の結果としての廃業ですから、いわば街なかに多くの廃業予備軍が予想されるなかで発生した空店舗ですから、従来の様に右から左へ借り手が付くというわけにはいかず、空店舗のまま固定化します。廃業圧力は強まりこそすれ衰えることはありませんから空店舗は増える一方。空店舗率10%,20%とアップする・・・。
これが商店街空洞化のプロセスです。

 あらためてこうして空洞化のプロセスを確認すると、陳腐化、劣化、空洞化は、実は物理的な・可視化出来る以前に、個店の来店目的、商店街の来街目的の陳腐化烈火空洞化という形で進行したのだ、ということですね。しかもそれは一般的、客観的な基準があってのことでは無く、商店街の得意客さんたちの主観的、経験的な買物行き先の選択行動の結果でした。

 これが「商店街空洞化」の実像です。
空洞化の要因として、中心部の人口減とか、都市機能の郊外移転などがあげられますが、けして主因では無い。空洞化の主因は集積間競争であり、そして商店街にはこの競争に勝つ方策はありませんでした。
 集積間競争は、来街目的の優劣を巡ってお客の頭の中で争われます。競争への敗北は商店街がかって提供していた「来街目的」が陳腐化―劣化―空洞した結果ですね。
自生的商業集積である商店街と計画的商業集積としてのショッピングモール等との「来訪目的」のレベルの差違などということもありつつ、長きにわたって取り組まれている「商店街活性化」のと取組、行論的には当然「来街目的の再構築」として取り組まれるべきところ、実際に取り組まれているのは、何を・なぜ:目的に掲げた取組になっているのか、その結果、活性化の取組は活性化の実現に向かって進んでいるのか、はたまた進んでいないのか?

三位一体の環境の変化

商店街が空洞化したのは、通行量が減ったからではなく、人口減、少子高齢化のせいでもありません。

空洞化したのは大店法当時から間断なく進む環境変化を的確に理解し、適切な対策を講じなかったからです。
小売業は、環境の変化を察知してその変化を自店にとって〈プラス〉になるように売り場を変えていくことが仕事です。繁盛したい小売業に不可欠の仕事は環境の変化を的確に理解すること。〈目に見える変化〉だけ見ていたのではダメですよ。

商店街がいくら活性化に取り組んでも一向に展望が出てこないのは環境の変化を適切に理解しようとせずに、もっぱら〈目に見える問題〉に取り組むことで活性化を実現できる、という根本的なものの見方・考えかたに原因があります。
商店街で「目に見える問題」と言えば、
1,通行量の大幅な減少 と
2.空き店舗が埋まらず増え続けていること
ですね。
3.魅力的な店舗が少ない
というのも最近はよく聞かれます。

活性化するためには
1.通行量を増やす(住む人・来る人を増やす。イベント)
2.空き店舗を減らす(補助制度で出店者を誘致)
に取り組めばよい、というのが多くの関係者に共通の考えですが、果たしてそれで商店街は活性化出来るのか?
その答えはとっくに出ています。

この取り組みで商店街の買い物客を増やすことは出来ません。
皆さんが事業に取り組む都度経験されているとおり。
本当に対応しなければいけない環境変化とはどのような変化か?
〈キラリ〉に取り組んだ人はしっかり勉強したはずですが、もう忘れたでしょうね(^_^)
列挙しますのであらためて対応の方向と方法まで思い出してください。

〇商店街が直面する環境変化・三点セット
1.競争の変化:業種内競争、街区内競争、商店街間競争という商店街おなじみの競争はおしまい。現代は、異業態間競争、集積間競争の時代。後出の商業施設は、集積としてのコンセプトを確立し、それを分担する中小テナントを集めて〈来訪目的〉を構築しています。競争は〈どの集積が最もお客の消費購買ニーズを満足させるテナントミックスを提供しているか、を巡って争われています。
個店は広域商圏でどの商業集積に所属しているかで招来が予測できる時代です。商店街が熟知している競争手段が通用する競争状況は消滅しています。

2.要否購買行動の変化:行動範囲内に多種多様な商業施設が展開している現在、地域の消費者は買い物の用途、目的に最適の集積・店舗に向かいます。買い物の性格によって買い物行き先を使い分ける。その基準はコモディティ(必需)とスペシャリティ(嗜好)に二極分化しています。

3.商店街の変化:商店街は競争の変化、消費購買行動の変化を的確に理解できないまま、もっぱら昔商店街・個店が同質売り場間競争に明け暮れていた当時の店づくり、販売促進で競合に対応しようとしていますが、もちろん、通用するはずがありませんから、広域で繰り広げられている競争から脱落する趨勢に陥っています。このような商店街を事業環境として選択する企業者はいませんから、空き店舗は増えるばかり。補助制度を利用した出店も補助が終われば提出すケースが多い。

三点セットの環境変化は、それぞれ独立して起こっているものではありません。スーパーマーケットの登場以来途切れることなく続いている新業態の商圏参入が原動力となって起きている、言わば〈三位一体〉の環境変化です。
この変化には上述したような〈目に見える問題〉への弥縫的手事業では対応できません。
その結果、いくらお金と時間を投入して取り組んでも成果が得られない、〈目に見えている問題〉への対応ですから知識や技術を習得する必要も感じられない。取り組んで成果が得られなくても〈済んだことをとやかく言っても仕方がない〉とうやむやのうちに終了、ほとぼりが冷めるとまた同質類似僅差事業に取り組む、というパターンの繰り返し。

このパターンからの脱却するには、対応すべき環境の変化を〈三位一体の変化〉として捉え、変化が〈プラス〉になるような売り場のありかたを実現すること。商店街の場合は変化を〈プラス〉にできる売り場をそろえること。

そういう売り場を作れる小売業があなたの商店街に来てくれるというのは期待しがたいことですし、第一、三位一体の環境変化を〈プラス〉にしている小売業がたくさんあるとは思われません。

自店を繁盛させ、商店街を活性化したければ、自店が変わり、仲間の店が変わっていく以外に方法はありません。〈キラリ〉に取り組んだ人は勉強したとおり。思い出しましたか?

商店街活性化は、既存個店の潜在能力を引き出し開花させることが出来るかどうかがカギ。
我々はそれを引き出すことに長年取り組んで来ています。 
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有限会社 クオールエイド

  • Author:有限会社 クオールエイド
  • 【キラリ輝く繁盛店づくり】
    お客に見える店づくり―見える化をテーマに【個店の繁盛】から【商店街活性化】、【中心市街地の商業集積としての再構築】まで一貫した取組を支援します。
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